第10話 義妹沙夜 その3
あれよあれよという間にブレザーを脱いで、ミススカートをすとんと落とす。ブラウスの上のボタンから外しはじめ……。黒くセクシーなシースルーランジェリーが姿を現したのだった。
着ている本人は可愛らしい少女なのに、その姿はものすごく妖艶で。幼さの残る守ってあげたい系の女の子がそれをまとっているのが背徳的で犯罪的で。俺は見ているだけで心臓が高鳴り、息が荒くなっていく。
「沙夜さん! 媚薬はやりすぎです!」
「沙夜! それはダメじゃん!」
澪とサリーが味方をしてくれたが、沙夜が止まる気配はない。俺に近づいて、淫靡な微笑みとともに俺の首に腕を回してくる。
「お義兄さま……。私を受け入れいてください。小さいころからの希望でした」
「ダメだ沙夜ちゃん……。俺から……離れてくれ……。薬のせいで、俺はもう……」
「沙夜さん。離れてください!」
「沙夜! 離れなよ!」
と、理性が消えかかっている俺の前で、沙夜ちゃんが澪とサリーに流し目を送る。
「実は澪さんとサリーさんの紅茶にも媚薬を入れました。いかがですか、カラダの調子は?」
「え? ほんと? というか、私、なんだかカラダが熱くなって……」
「ホントだ! なんだか興奮してものすごくその気になってきた!」
「ちょっとこれは、駄目そう……ね……」
「このビヤクってやつ、じつはすごくない?」
澪とサリーも、顔をとろかせて俺を見つめてきた。その表情は、情欲に支配されてしまったメスの顔。薬を飲まされた俺もたかぶって、抑えが効きそうにない。
「さあ。お義兄さま。本当は、初めては二人きりで……というのが望みなのですが、背に腹は代えられません。澪先輩やサリーさんともども楽しみましょう」
「沙夜ちゃん。それって……」
「はい♡ 4Pになります♡」
ニコッと微笑んできた沙夜ちゃんが口づけしてきた。瞬間、脳内で火花が飛んだ。沙夜ちゃんの中に舌を入り込ませて、絡め合う。そのまま、澪やサリーともども、ベッドになだれ込んだのであった。
◇◇◇◇◇◇
二時間ほどのち。興奮した四人で大乱戦を繰り広げた後、俺たちはベッドに倒れ込んでいた。澪とサリーは、すやすやと寝息を立て、沙夜ちゃんが横から俺に抱きついている。
「ふふっ」
耳に声が聞こえたので見やると、沙夜ちゃんが可愛らしく笑っていたので、たずねてみた。
「沙夜ちゃん……。なんで……わらったの?」
と、沙夜ちゃんがここだけの秘密だという様子で、唇に人差し指をあててささやいてきた。
「実は……」
「実は、なに?」
「実はですね。媚薬なんて入れてません。お義兄さまたちの飲んだ紅茶は、普通のただのストレートティーです」
「…………」
俺は、絶句した。沙夜ちゃんは俺や澪の紅茶に媚薬を入れていないという。俺たちが飲んだのは、ただのお茶だと言ってきたのだ。確かに、興奮して行為に及んだものの、身体の変調みたいなものは微塵も感じられない。効果の強い薬を飲んだという実感は、全く残っていなかった。
「はい。そんな得体の知れないモノをお義兄さまの口にさせられるはずがないじゃないですか。男性を誘ってその気にさせるテクニックってあるんですよ。そのテクニックに、ただのプラシーボ効果が加わっただけです」
「澪や、サリーは……?」
「あの二人は、お義兄さまとやりたすぎです」
ニコッと可愛らしく笑う沙夜ちゃん。愛らしく愛おしい。でも同時に、恐ろしさも感じた。実は天使の様に微笑ましいこの沙夜ちゃんは仮面を被ったサキュバスなんじゃないか、そんなことを思って背筋が震えるばかりだった放課後の文芸部なのであった。
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