第39話 書道教室

父の姉の旦那さんが書道家だった

なので、近くに住む親戚は皆通わなくてはいけないという勝手なルールがあった


私は、イヤでイヤで仕方なかった

なんでかというと、お気に入りの洋服に墨汁が飛び洗濯しても落ちないからだ


毎週、日曜日の9時からだった

しかし、日曜日の朝は子供にとっては楽しみにしているアニメをやっていた

私は行きたくないのとテレビが見たいのと親戚だから良いだろうという甘えから

毎週遅刻をしていた

なぜか弟も


家から5分ほどの自治会館を借りて書道をやっていた

テレビが見終わり走って行くので9時35分くらいにいつも着いていたと思う


その日は、書道家の叔父が機嫌が悪かったのか遅刻してきたことを皆の前で怒られた

しかも、その言葉が意味深だった


『親が親だからろくな育て方していない!』と!

私はフエルトの下敷きに半紙を敷き文鎮を置き用意をしていた


真っ白な半紙に墨汁をたっぷりと染み込ませた筆で真っ黒に塗りつぶした


そして、『うるせーんだよ!』と叔父に向かって言った


皆、驚いてシーンとした


なぜだろう?

なぜ?

なぜ?

なぜ?


あんなにも嫌いな両親の悪口を言われて言い返すなんて・・・


正直、自分が一番驚いた


ろくでもない親だとは思っていたが、他人から言われたのは初めてだった

なんだろう、かばうつもりなんてなかったのに


叔父は顎鬚が長く、いつも私の頬にあててジョリジョリしてきた

私はそれが痛いし気持ち悪くていつも心の中で『やめてー!』と叫んでいた


ちょうど良かったかもしれない


そして、書道教室には行かなくなった


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