第33話 ナポリタン

公園に行くと初めて見る小さくてかわいい女の子がいた

すごく人懐こく話しかけてきてくれた

同い年で北海道から引っ越してきたそうだ


すぐに仲良くなり、アパートに遊びに行った

粘土で遊んだと記憶している


なっちゃんと呼んだ


なっちゃんのご両親は喫茶店をやっていた

おじいちゃんの家のとなりでやっている


毎日、遊んでいた

『今度はおじいちゃんの家に行かない?』

なっちゃんの住むアパートよりもおじいちゃんの家の方がうちからずっと近かった

『うん、行きたい』

そして、おじゃますることに


とてもきれいで品のあるお母さんが出迎えてくれた

なっちゃんがかわいいのに納得した


ふたりでテレビゲームをしていた


ちょうど、お父さんの喫茶店にお客さんがいなかったからか

なっちゃんのお母さんに呼ばれて喫茶店に入れてもらった

初めての喫茶店、すごく大人になった気分だった


お父さんがナポリタンとクリームソーダを作って持ってきてくれた

実は・・・私はナポリタンが大嫌いだった!

心の中では、どーしよーと冷や汗たらたら

せっかく作ってもらったのだからと一口


『おいしい~!』

本当においしかった!

というか本当のナポリタンというものを食べたのだ


うちの母が作るものとはまるで別物

いうならば、ケチャップをかけたパスタをナポリタンだと思い込んでいた

それはそうだ!なっちゃんのお父さんはプロなのだから


それから、ナポリタンの概念が変わった



余談ですが

私は地元を離れて20年以上経っているがお店は現存している

近くに用があり、懐かしかったのでお店に寄った

なっちゃんのお父さんは現役でマスターをやっていた

ナポリタンと冬で寒かったのでラテを頼んだ

変わらずおいしかった


私に気が付くかな?なんて思いながら素性を明かさなかった

気が付いてもらえなかったので

お会計の際、『昔と変わらずおいしかったです!すぐそこに住んでいて毎日遊びにきていたものです』と言った

『え?ん~?まりちゃん??』

『そうです!』

『すかっり大人になっていてわからなかった~』

『え?そうですかー?なっちゃんは元気にしていますか?』

などとしばらく近況の話をした


懐かしのナポリタン、変わらない味でほっこりしました

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