第34話
昨日のミスリルゴーレムの戦いを思い出すと、やっぱりイレギュラーの魔物にも【強欲】が使えていたらなぁって思ってしまう。
イレギュラーの出現なんて滅多にないし、【強欲】を発動していれば、きっと良いスキルカードを落としていただろう。
それこそ、【魔法吸収】とかのスキルを手に入れていた可能性だってある。
……ああ、羨ましい。
もちろん、周りに人がいたので使えるはずもないんだけど、俺がソロの時とかに遭遇したいものだ。
……さて、今日の予定はどうしようか。
昨日のミスリルゴーレムの戦闘で今の俺に足りないスキルが一つ分かった。
魔法ではない攻撃系のスキルだ。ミスリルゴーレムが魔法を吸収したように、魔法が通用しない相手には別の手段で攻撃する必要がある。
今の俺には【瞬足】を組み合わせた攻撃しかないため、魔法以外の強そうなスキルが必要になる。
これまで魔法に頼りすぎていたのは間違いないし、実際それでどうにかやれていたけど……ミスリルゴーレムのような相手に何もできないのはダメだ。
そんなのファントムのイメージが損なわれる。
ファントムは、どんな相手に対しても無敵で、最強で、強くて、かっこよくてクールでなければならない。
俺はスマホを取り出し、埼玉内のダンジョンを検索し始めた。
……何か、攻撃的なスキルを使ってくる魔物がいないか、ダンジョンの攻略情報を眺めていく。
しばらく検索していくと……見つけた。
「サーペントラミア……か」
下半身は蛇の体で、上半身は女性のもののようだ。
両手に長剣を持ち、鋭い刃を飛ばして攻撃してくる魔物だ。
……魔法系のスキルでなかったらいいんだけど、どうだろうか?
斬撃系のスキルを持っている確率は高いし……何より、斬撃を飛ばすってロマンだ。
かっこいいし、強そうなのでこれを取りに行こう。
準備を済ませ、さっそくそのダンジョンに向かうことにした。
現地に到着すると、ダンジョンの入口はそこまで混んでいなかった。
やはり、東京と比べると人が少なくていいね。
すぐにダンジョンへと入り、途中の魔物を倒しながら進む。
三階層……ここに目的の魔物がいる。
ダンジョンに潜ってしばらく進むと、地面に黒い影が映り、その影がうごめき始めた。
「来たか……サーペントラミア」
巨大な蛇の体が地面から出現し、威嚇するように長剣を構える。
鋭い目つきで俺を睨みつけてきたと思ったら、両手の長剣を振り回してきた。
ここはCランクダンジョンだが、十分見切れる速度だ。
複数に囲まれたら厄介かもしれないが、【索敵】で一体だけを狙っていけば問題なく倒せる程度だと思う。
……スキルを獲得しまくっているおかげもあるのか、俺の能力はかなり上がっているようだ。
連撃を回避していると、途中サーペントラミアの長剣から斬撃が放たれた。
……これが、攻略情報にのっていた攻撃か。
俺はそれをダークウォールを展開して防いだ。……危ない。結構な威力だ。
このスキルを俺も使えるのかどうか……早速、【強欲】のスキルを発動してみる。
……【飛刃】! これが、さっきのスキルかも!
絶対、手に入れてやる。【飛刃】をドロップするようにしてから、サーペントラミアと戦い始めた。
こいつの斬撃攻撃は遠距離からでも届くため、うかつに近づくことはできない。だが、それならこちらも遠距離攻撃だ。
ダークアローを放つと、サーペントラミアは鋭い刃を飛ばしてきた。
斬撃と打ち消しあったが、俺がさらにダークアローを放つと、サーペントラミアの体に命中する。
一撃では仕留められなかったが、そのサーペントラミアの体が沈み込む。
……【闇魔法】と【重力魔法】の連携も、できるようになってきた。日頃の練習のおかげもあって、魔法の操作技術が上がってきた。
これまでは一つの魔法を使って戦闘していたのだが、こうやって複数を組み合わせればより効率よく戦えるはずだ。
さらにダークアローを放つと、サーペントラミアは重たそうな体で剣を振るってきた。俺のダークアローを長剣で弾いたけど、その剣がずしんと沈む。
「……しゃぁ!?」
ダークアローに、グラビティの魔法を組み合わせているんだから、長剣が重くなるのは当然だ。
こんな感じで、魔法を防がれたとしても他の魔法が動作する可能性があるので、複数の魔法を組み合わせるのは強いと思う。
……昨日の、ミスリルゴーレム戦でも使えていれば、もっと余裕をもって戦えてたよね。
反省しないと。
サーペントラミアの動きを完全に封殺した俺は、その体にダークランスを放って仕留めた。
地面にキラリと光るカードが落ちた。
……狙い通り、【飛刃】だ。
スキルカードを手に入れた俺は、すぐにそれを使用する。
……ステータスカードにちゃんとスキルが追加されていることを確認した俺は、早速【飛刃】を使用してみる。
短剣に魔力を集め、振りぬくと……サーペントラミアがやっていたように斬撃を放つことができた。
魔力消費しているみたいだけど……魔法攻撃、じゃないよね?
きっと違うだろう。もしこれで同じ魔法でミスリルゴーレムのような相手に吸収されたら悲しい。
でも、斬撃はかっこいいので連射してみる。
……うん、これにグラビティを合わせるのもいい。
当たった相手にかかる負荷を変化させることもできるし、斬撃に【闇魔法】を合わせ、ダークアローを周囲にまき散らしながらの攻撃とかもできる。
……やっぱり、色々と合わせてみるのがよさそうだ。
とりあえず、これで今日の目的は達成したけど、せっかく普段は来れないCランクダンジョンなので、ひたすら魔物を狩り続けていく。
とにかく、さらに強くなるためにスキルの練度を高めないと。
昨日、テンペストギルドの戦いを見ていた俺としては、総合力として見ればかなり高いと思うけど、瞬間的な火力では嵐堂さんに劣っている。
……ファントムが、そんなのではダメだ。
この世の中で一番強い存在にならないと、ファントムのイメージが損なわれる。
そんなこんなで、ひたすらにダンジョンに潜っていた俺は、夕方になったところで外に出た。
そろそろ帰ろう。
ダンジョンを出た俺は【偽装】と【重力魔法】を使って、空へと飛び上がる。
……家まで、まっすぐ飛んで帰った方が早いだろうし、何より【重力魔法】で飛ぶ訓練にはぴったりだ。
速度や高度を微調整しながら、まっすぐ家を目指して飛んでいく。
風を切る感覚が心地いいが、ミスったら落ちて死ぬかも。
……そんなださい最後だけはファントムとして、絶対に回避しないとね。
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