第33話
「みんな~! 今回は、ファントム様の特集がテレビで流れるってことで、一緒に見ていくわ! もうね、私、ファントム様のこと隠すのやめたから! ほら、事務所から『あんまりそういうのは……』って止められたけど、知るかー! って言っといたわ」
<完全に開き直ってて草>
<さすが渚ちゃん、ファントム愛全開w>
<そもそも隠してたか?>
「隠してたっての。というわけで、なぎさ団も皆ファントム推しになるように。そういうわけで、今日も全力でファントム様応援していくわよ」
<まあ、別にいいけど>
<渚ちゃんのテンションに期待w>
<なんかNTRされたみたいでこれはこれでいいかも>
「……おっ、始まりそうね」
渚が画面を見つめると、ファントムの特集が始まり、テンペストギルドとの戦いの様子が映し出される。
テンペストギルドの戦闘の様子を紹介するところはすべて興味なく見ていたが、スタジオのキャスターがファントムの登場について語り始め、嵐堂とのやり取りやミスリルゴーレムとの激闘が次々と映像に流れだしてからは、渚の声が大きくなっていく。
「ほら! これこれ! みんな見て! ファントム様がゴーレムにダークアローを放ってるシーンよ! やっぱりこの瞬間よねぇ、かっこよすぎるぅぅ!」
<ファントム、マジで強いな>
<このダークアローやっぱ凄いわ>
<渚ちゃんメロメロじゃんw>
「ふ、ファントム様……しゅごい……あああっ……この正確な攻撃! 見て見て、ほら! ミスリルゴーレムの弱点を的確に狙ってるんだから……ファントム様、マジ神だわ……」
渚はうっとりとした声をあげていた。
「さーて、ファントム様の次のシーンも超絶カッコいいからね、みんな一緒に見よう……って、何これ?」
<ファントム、なんで助けに来るの遅かったんだ?>
<テンペストの探索者がやられる前に来いよw>
<マジで、ファントム様が活躍したの最後だけじゃね?>
ファントムのアンチたちのコメントを見て、渚がすぐに目を吊り上げる。
「はぁ!? 何言ってんの!? ファントム様が遅かったって、どこをどう見てそんなこと言ってんのよ!?」
<確かにファントム様遅くね?>
<テンペスト頑張ってたのに、ちょっとだけ美味しいとこ持って行っただけじゃん>
<ファントム、完全に出遅れてたろw>
「何その言い方!? だってさ、よーく考えてみなさいよ。テンペストギルドの依頼でしょ? それにさ、ファントム様はちゃんと見守ってたんだから、むしろ空気を読んで登場してくれたんじゃん!? 私も事務所の仕事とか受けるけどさ、いきなりよその誰かがやってきて、いきなり何かしたらそれこそ大問題ってわかるでしょ!? 働いたことないの!?」
<ファントム推しだからって、それはちょっと言い訳っぽくない?>
<いや、遅いもんは遅いw>
<テンペストがかわいそうじゃね?>
<渚ちゃん、落ち着いて>
<なんで自分へのアンチはスルー出来るのに、ファントムのアンチにはここまで突っかかるんだよw>
「はぁ!? いやいやいや! ファントム様の判断はまったくおかしくないから! マジでファントム様のこと批判してるアンチたちは一回自分で探索者活動してみたらいいのよ、バーカ!」
<渚ちゃんマジギレw>
<これは完全にバーサーカーモード>
<草>
「だいたいさ! ファントム様は英雄なんだから! 遅れて登場したほうが盛り上がるんだし、むしろこれでいいの!」
<ww>
<まあ、英雄としてみたらタイミングは完璧だなw>
<渚ちゃん正論すぎるw>
<実際、テンペストギルドも大怪我した人はいないし、テレビ局の視聴率はすさまじかったらしいから、そういう面でみたらこれも正解だなw>
「そうでしょ!? ほら、みんな分かってるじゃん! それが彼の魅力なんだから、逆に感謝しなさいっての!」
<でも、テンペストも頑張ってたんだから、もうちょっと早く来てもよかったんじゃね?>
<ファントムの活躍って、結局テンペストがいたからだろw>
<ファントムはミスリルゴーレムを生み出した張本人だぞ>
「証拠あるの!? ソースはどこよ!? ファントム様は報酬も何もないのに助けてあげたんだから、そもそも遅いとかいうのが間違い! むしろ彼が華を持たせてくれてたんだから、感謝するべきなのよ! 分かる!?」
渚ちゃんの強い反論に、コメント欄の空気がさらにヒートアップする。
<ファントム様の判断は神>
<遅いって言ってるやつの頭がおかしいんだろw>
<渚ちゃんフルパワーすぎて草w>
「そういうこと! 遅いとか言ってるアンチは見る目ないのよねー。揚げ足ばっかとろうとしてると人生楽しくないでちゅよー? 頭見てもらったほうがいいでちゅよー?」
<メスガキキャラ出てきたw>
<マジで渚ちゃんファントムのことになるとやばくて草>
<キャラ作ってるときよりキャラやばくなってるのこれマジ?>
<アンチ沈黙w>
<渚ちゃんの超理論が凄まじすぎて笑うw>
「とにかく! ファントム様が遅れたのはお門違い! 仮に遅れたって、それがカッコいいんだからの」
<まあ実際テンペストの人たちも感謝してたしな>
<ファントム様が戦うタイミングは完璧だったと思うけどな>
<最初から手を貸してたらそれはもうテンペストへの仕事じゃなくなるし>
<前衛が潰されたときに助けに入るべきって意見もあったけど、嵐堂の魔法が当たってたら倒せるだけの威力だったのは確かだしなぁ>
<アンチどもどうした? いなくなったのか?>
「ま、結局ファントム様が正義なんだから、遅いとか言うのは間違いなの。じゃ、みんな、この戦いに勝利した私たちは、ファントム様のカッコいいシーンをもう一度見て、しっかり楽しんでいくわよ!」
<うおおお、ファントム様最高!>
<さすが渚ちゃん!>
<アンチ全滅w>
映像が進み、ファントムが嵐堂に指示を出してミスリルゴーレムを倒す場面に差し掛かる。渚ちゃんのテンションはさらに上がり、体が勝手に動き出す。
「おほおおおおおお! ファントム様ぁぁぁ! しゅごいぃぃぃ! なんでそんなに強いの!? あああ……かっこよすぎてつらぁぁぁあい!!」
<渚ちゃん出たぁぁw>
<やっぱこうなると思ったw>
<ファントム様の力しゅごいぃぃ!>
「はぁ、はぁ……ファントム様、ほんとにしゅごい……ああ、もう一生推すしかないでしょ! こんなの見せられたらさぁ……ああ?」
<ファントム様しゅごいぃぃ!>
<渚ちゃんのファントム愛やばすぎw>
「……ふう……ファントム様の戦い終わっちゃったわね。……ああ、もっと見たい! ファントム様ぁ……次の冒険も早く見せてぇぇ!」
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