第43話

「あー…お疲れ、高宮さん!マツエクはもう上がりの時間?いーなー…俺は今からレッスン」




美容師のスタイリスト、桝井ますいさんに声をかけられて振り返る。





──…チャラいな、顔面が。





『あ…お疲れ様です。お先に失礼しまーす、』






深く付き合いたくはないので、職場の人間とはドライな付き合い方をしている。なのにこの男は、






「今度高宮さんの髪俺に染めさせてくれない?綺麗な髪色だけど地毛?全然傷んでないね」





そっと髪に触れられて、慌てて桝井さんから離れる。気持ち悪いな、私に触れていいのは楓ちゃん一人だけなんだよクズ男。






「そんな拒否んなくてもいーのに。」





傷ついた…みたいな顔をしたかと思うと、すぐに笑顔に戻るチャラボーイ桝井。






「高宮さんってあれでしょ?ツンデレ!いや、顔がめちゃくちゃタイプ!可愛いしモデル体型だしマジ理想!なぁ、1回俺と寝てみない?」




『──…お断りします、私…彼氏いるんで』




「彼氏でしょ?旦那じゃないならいーじゃん、1回くらい。減るもんじゃねーさぁ」






うわ、なんだこのセクハラ発言。





「はいストーップ!高宮さん、ごめんな?こいつ歩く生殖器だから、気をつけて?ほら行くぞ桝井ー…」






美容室の店長(男性)、兼城かねしろさんによって桝井さんは回収されていった。─…助かった、なんて思ったのは束の間。






他の女性スタッフから感じる冷たい視線。





──…嫌になるよね、こーいうのは。

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