第13話


「今日あった嫌なことは、全部忘れて?」





なんて、優しい声色で言うからっ…楓に抱きしめられた腕の中で、1人こっそり涙を流した。なんでバレたのかな?どこでミスした?ごめんね、楓っ…いい気、しないよね





「美羽、まだ起きていられる?夕飯食べて急いでシャワー済ませるから…寝ないで待ってて」





それは─…不器用な楓の精一杯のお誘い。





『……寒空の下で3時間、クズ副社長の為に並んだ私が…大好きな楓のことを待てないワケないでしょっ…もう、早くご飯食べてっ!!』






赤く染った顔を見られないように、楓から離れて冷めてしまった夕飯を温め直す。





「──"クズ"って言葉は、取り消してね?」






今日も私の彼ピは、クズ副社長に洗脳されている。それでも私のことを理解しようと歩み寄ってくれる楓のことが、私は今日も大好きです。












「──で、お詫びの品はどこへ消えた?」

『ん?全部配ったよ、近所の人に。』

「近所って…2つ隣の家にも渡した?」

『あぁ、一人暮らしの大学生だよね?』

「………男の一人暮らしを訪ねたの?」

『訪ねたって…渡してすぐ帰ったよ?』

「なにソレ、普通に浮気でしょ。」

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