第45話

「”絢音あやね”だから─…あやねぇ?」



『……ど、どうですかねっ…でも少しは、私のことを信頼してくれたと思っても良いのかな』



「……そうだな、俺も実夏も…絢音には感謝してるよ」





一瞬、律希さんか手を伸ばしてきて…そっと私の髪を撫でてスーッと指を通した。




──…なに、シてるの?




「……行ってきます」




私から手を離し、優しく微笑んでから家を出ていった彼。誰もいなくなった玄関でしばらく動けなかったことは言うまでもない。





──…好きになっちゃ、ダメだよね




三年後に離婚する。これをベースに進めてきた私たちの婚姻。今更そこに恋愛感情なんてものが乗っかったらとんでもなくややこしい問題に発展するのは目に見えている。






もう既に…私の日常の一部になりつつある二人のことを、三年後何も思わずに手放すことなんて出来るのだろうか?





『………仕事、しよう』





考える必要なんてない、私たちは契約結婚。今更その関係を崩すような感情を持つのは間違ってる。忘れればいい、今まで通り─…無かったことにすればいいんだ。

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