第33話

『律希さんが言ってくれないと、私は自分からミナちゃんに近付くことは出来ないよ。だから一人で無理だって思うなら─…今ここでそう言って』




何を言ってるんだ、私は。一人で無理だと言われたらどうするつもりなんだ?バカなことを言った、本当にこんなハズじゃ…無かった





「………一人では、無理だ」




──…ほらね、言われてしまった。




「今までも、俺は実夏のために父親らしいことなんて何ひとつしてやれなかった。」




この人、本当に私より年上?あー…ほんと、しっかりした大人びた人なんて思ってた自分を殴ってやりたいよ。




『何もしてないのは、今この瞬間だけです』




先程引っぱたいてしまった彼の頬にそっと触れる。泣きそうな顔をしている律希さんを安心させるように笑いかける




『ミナちゃんはとてもいい子に育ってると、私はそう思います。貴方と彼女が過ごしたこの三年間は確実に…意味のあるものだと思います』




「─…絢音っ、」




『一人が無理なら─…私が支えます。なんて言いつつ私も子育ての知識は皆無ですが、二人いれば見つからない答えも見つかるかもしれないじゃないですか』





──…だから、、




『私には関係ないとか…迷惑はかけない、って言うの…やめてもらっていいですか?協力を要請された以上、契約期間内はしっかり貴方の妻をやらせていただこうと思いますので!そのつもりで、よろしくお願いします!!』





もう二度と…狼狽えたりしない。この結婚を望んだのは他の誰でもない、私自身だから。結婚なんて…簡単だって思ってた。お互いにメリットがあるし紙を出せばそれでお終いだって…そんなふうに楽観視してた自分だって悪いところはあるんだから、、





「………絢音、」




だから、この先三年間は─…妻としても母としても全力を注ごうって、そう…決めたのにっ、

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