第52話

「えっと…それはつまり、嫉妬、」



「なわけねぇだろ。俺以外の人間に懐いてくれんなら、面倒を見る手間が省けて楽だって意味だ」




離れろ、っと言って私から距離をとった仁睦さん。…そんな悲しいこと、言わないで。




「新次郎さんは…推し活をする私と推しである仁睦さんを繋ぐパイプ的役割の存在で、それ以上でも以下でもありません!」



「……それは日本語か?」



「つまり、私の唯一無二の神推しは…仁睦さんしか居ないってことです。」




今度は正面から、ギュッと力いっぱい抱きついた私を─…仁睦さんは引き剥がすようなことはしなかった。




「……で?ちゃんと寝られたのか?」



「……ん?」



「ホラーが無理だの、オカルトがどうだのって騒いでただろーが」



「っあ…そうだった。眠れそうにないので夜は添い寝してもらっていいですか?」



「あ?上着、掛けてやったら幸せそうにニヤついて爆睡してただろーが。」




……まさか、ジャケットを掛けてくれたのが仁睦さんだったなんて、、知りたくなかった。




「………ね、寝顔!見たってことですか?!」



「今更だろ。火災現場から連れ出した時からお前の寝顔なんて飽きるほど見てる」



「飽きるほどって、どういうっ、」



「目が覚めるまで付き添ってやった俺には礼の一言も無しとは。いい身分だな、クソガキ」




べシッ…と私の頬を指で弾いた仁睦さん。


あれ?なんだか距離が縮まったような気がするのは…気の所為?!!

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