月夜の守護者

菜乃花 月

月夜の守護者

「月夜の守護者」


【登場人物】

ヒナ(女):元気いっぱいの女の子。夜の記憶はなく、気付いたら朝。いっぱい食べる

リュウ(男):流れでアイドル王子になった。優しい。演者の性別不問

ロウゼル(不問):リュウの使用人。アイドルのリュウが大好き。演者の性別不問

マーサ(不問):リュウに一目ぼれした。武器は大剣で即行動型。演者の性別不問

ルル(不問):マーサと一緒に旅をしてる回復役。ただ、マーサが強すぎて回復役の役割は果たしてない。演者の性別不問


こちらは「ハロモン」参加作品です!

2024年9月1日~10月31日まで、「怪物」「食べる」の二つのテーマから連想されるシナリオをみんなで書こうという企画です!


#ハロモンシナリオ


主催

七枝、メイロラ、穂村一彦、菜乃花 月


―本編―


~過去の記憶~


リュウ:「君、一人なの」


ヒナ:「・・・うん」


リュウ:「そうなんだ。じゃあさ」


ヒナ:「ん?」


リュウ:「僕の元へおいでよ」


ヒナ:「いいの?」


リュウ:「いいよ。ただ一つだけ約束して」


ヒナ:「なに?」


リュウ:「行きたい場所がある時は僕に必ず伝えて」


ヒナ:「それだけでいいの?」


リュウ:「うん」


ヒナ:「わかった。・・・じゃあ私からも一つお願いしていい?」


リュウ:「なに?」


ヒナ:「アイドルになって」


リュウ:「・・・は?」


~間~


~現在~


ヒナ:「ん・・・ふわぁ、もう朝かぁ・・・」


ヒナ:(N)目を覚ますと、いつも隣には寝ている君。

規則正しい呼吸が聞こえてくる。そんな静かな朝


ヒナ:「ふふ、リュウは寝坊助さんだね」


~愛おしそうに見つめるヒナ~


ヒナ:「おはよう、リュウ」


~間~


~数時間後~


リュウ:「みんなーーーー!!!!今日は来てくれてありがとう!!!!それじゃあ聞いてください!!!今月の祝辞!!!!」


マーサ:「・・・見つけたわ。アタシの理想の王子様」


~間~


リュウ:「何が今月の祝辞だバカバカしい」


ロウゼル:「今日も最高でしたよ王子」


リュウ:「そんなこと言うのは君くらいだよロウゼル」


ロウゼル:「そんなことありません。王子がアイドルするようになってから国民は大盛り上がりです。最初は配布だったペンライトも今では持参100%ですよ!」


リュウ:「一国の王子が毎月ライブを開いてるっておかしいと思うんだけどな。しかも月に一回の報告会だよ」


ロウゼル:「いいじゃありませんか。王子と国民のコール&レスポンスは見ていて気持ちいいですよ。特に今月の祝辞はたまりません!」


リュウ:「みんなが祝辞を歌えるって意味わからないはずなのにな・・・」


ロウゼル:「これも全部ヒナさんのおかげですね」


ヒナ:「リュウ~~~!!!!」


ロウゼル:「噂をすれば」


ヒナ:「リュウ!おはよ!」


リュウ:「おはよう、ヒナ」


ヒナ:「ロウゼルもおはよ!」


ロウゼル:「はい、おはようございます、ヒナさん」


リュウ:「で、僕に何か用?」


ヒナ:「ご飯できたって!一緒に食べよ!」


リュウ:「そんなことのために走ってきたの?」


ヒナ:「うん!だって、リュウと一緒がいいもん!」


リュウ:「わかった、着替えたら行くよ」


ヒナ:「今日もアイドルしての?」


リュウ:「うん、誰かさんのせいでね」


ヒナ:「えへへ、やっぱりリュウはかっこいいね!キラキラしてるのが似合う!」


ロウゼル:「わかります!王子はキラキラしてる瞬間は最高ですよね!!本人はそう思ってないのもまた良きです!やっぱり報告会ではなく普通のライブもやるべきだと思うんですよ!」


リュウ:「僕はできるだけ人前に出たくないんだ」


ヒナ:「えーーーもったいない」


リュウ:「ほら、ご飯冷めちゃうよ。いいの」


ヒナ:「はわっ!よくない!リュウ早く着替えてきて!」


リュウ:「はいはい」


~間~


~ものすごい勢いでご飯を食べるヒナ~


ヒナ:「(いっぱい食べてるヒナ)」


リュウ:「相変わらずたくさん食べるね」


ヒナ:「うん!だっへおいひいもふ!(だって美味しいもん!)」


ロウゼル:「ヒナさんを見てるとこっちまでお腹いっぱいになります」


リュウ:「わかる」


ヒナ:「ん~なぁにぃ~?」


ロウゼル:「ヒナさんはよく食べるなぁって話です」


ヒナ:「うん!いっぱい食べるよ!ご飯食べるの好き!!」



ロウゼル:「そう言ってもらえるとこちらも嬉しいです」


リュウ:「ヒナ、僕のもあげる」


ヒナ:「え?全然減ってないよ?」


リュウ:「半分は食べてる」


ヒナ:「半分しか食べてないじゃん!もっと食べなよ!」


リュウ:「お腹いっぱいなんだ」


ロウゼル:「ライブでお疲れですか?」


リュウ:「そうかもね」


ヒナ:「なおさら食べなきゃだめだよ!ほら、あーんして」


リュウ:「僕は大丈夫・・・」


ヒナ:「あーん!」


リュウ:「むぐっ・・・」


ヒナ:「美味しいでしょ?」


リュウ:「・・・うん」


ヒナ:「えへへ、だよね!」


ロウゼル:「王子が押されてるのいいなぁ可愛いなぁ」


ヒナ:「もう一口食べる?」


リュウ:「いや、本当にお腹いっぱいなんだ」


ヒナ:「そっかぁ・・・」


リュウ:「だから、僕の分も食べて」


ヒナ:「うーーーん、リュウがそう言うなら」


ロウゼル:「王子、今日は少し量を減らしておくよう伝えましょうか?」


リュウ:「いや、いつも通りでいいよ」


ロウゼル:「しかし」


ヒナ:「大丈夫だよ!リュウが困ったら私が全部食べるから!!」


リュウ:「というわけだ」


ロウゼル:「かしこまりました。確かに心強いですね」


リュウ:「だろ」


ヒナ:「ねぇ、ロウゼル!おかわりしてもいい?」


ロウゼル:「ふふ、もちろんいいですよ」


ヒナ:「やったぁ!おかわりください!」


~間~


ロウゼル:「王子」


リュウ:「どうしたロウゼル」


ロウゼル:「最近体調が優れないのではないのですか」


リュウ:「・・・理由は」


ロウゼル:「色々ありますが・・・一番は起きる時間です」


リュウ:「そんなに寝てる?」


ロウゼル:「えぇ、心配になる程ぐっすり」


リュウ:「多分色々追いついてないんだと思う。前より明らかに回復に時間がかかってる気はする」


ロウゼル:「何日か休んだ方がよろしいのでは」


リュウ:「僕が休めないってことはロウゼルが一番知ってるでしょ」


ロウゼル:「・・・えぇ」


リュウ:「僕は大丈夫。回復に時間はかかるかもしれないけど、目は覚めるから安心して」


ロウゼル:「一つ聞いてもよいですか」


リュウ:「もちろん」


ロウゼル:「あなたはいつもどんな気持ちで目覚めるんですか」


リュウ:「どんな気持ち?」


ロウゼル:「安心するとか、うんざりするとか」


リュウ:「どうしてそんなこと気になるの」


ロウゼル:「毎日見てるからですかね」


リュウ:「・・・まぁ、そっか」


ロウゼル:「深い意味はありません。ただ気になりまして」


リュウ:「どんな気持ちで目覚めるか・・・。そうだなぁ」


ロウゼル:「・・・」


リュウ:「実感と安心かな」


ロウゼル:「実感と安心」


リュウ:「終わりがないんだなっていう実感とヒナがいる安心。目が覚める度、現実を受け入れられないことは何度もあった。でも最近はもう・・・ヒナがおはようって言ってくれると安心するんだ。今日も守れたんだって」


ロウゼル:「本来、王子がすべきことではないのに、押し付けてしまい申し訳ありません」


リュウ:「僕が適任だからいいんだよ。国を守るのは王子の仕事だ」


ロウゼル:「ですが」


リュウ:「ありがとうね」


ロウゼル:「何がでしょうか」


リュウ:「いつも見守ってくれて」


ロウゼル:「いえ、それが私の役割ですから」


リュウ:「これからもお願いね」


ロウゼル:「はい、仰せのままに」


~間~


~暴れているマーサとそれを見ているルル~


マーサ:「はぁーーーーーーー!!!!プリリンに会いたい!!!プリリンに会いたいーーーーー!!!」


ルル:「うるせぇぞマーサ」


マーサ:「だってだってぇん!やっと見つけたのよアタシの王子様!」


ルル:「だからって帰ってきてから騒ぎ過ぎだ」


マーサ:「んもう、わからずやね!騒ぐくらいいいじゃないの」


ルル:「俺の近くで騒ぐなって言ってるんだ」


マーサ:「なぁに、もしかしてヤキモチ?」


ルル:「なわけないだろ!!迷惑だって言ってんだ!!」


マーサ:「素直になっていいのよっ」


ルル:「誰がお前にヤキモチなんか妬くか」


マーサ:「あらぁ、これでも結構男女問わず人気なのよ?」


ルル:「全員目が腐ってるんじゃないか」


マーサ:「まあっ!ヒドイこと言うじゃない!」


ルル:「思ったことを言ったまでだ」


マーサ:「あなたになんでこんなに嫌われてるかわからないけど、アタシにはどうでもいいわ!今はどうやってプリリンと会うかだもの!」


ルル:「あのさ、さっきからのそのプリリンってなんだ。あいつの名前はリュウだろ」


マーサ:「王子でしょ。プリンスでしょ。だからプリリン」


ルル:「その理論だけ結構な数プリリンいるじゃねぇか」


マーサ:「アタシの中のプリリンは一人だけよんっ!きゃっ!」


ルル:「はぁ」


マーサ:「でねでね!アタシはプリリンに会いたいの!」


ルル:「普通に会いに行けばいいだろ」


マーサ:「おばかっ!プリリンに会えるのは月一回なのよ!つまり来月まで会えないの!だから困ってるのよ!!」


ルル:「なんでそこまで知ってるんだ。会ったのは今日なんだろ」


マーサ:「えぇ、一目惚れだったわ。心臓にきゅぴぴーーんってきたから、その場にいた人に色々聞いたわ」


ルル:「さすが、行動力の鬼だな」


マーサ:「人生って長いようで短いのよ?好きを躊躇う時間なんてもったいないわよ!ビビッと来たら即行動!欲しいものは全部手に入れる!それだけよ!」


ルル:「あいつを手に入れる気なのか?相手は王子だぞ」


マーサ:「王子だろうと毛虫だろうと関係ないわ」


ルル:「毛虫と一緒にするな」


マーサ:「甘いわね。カエルになった王子とキスをする姫もいるのよ!だったら毛虫を好きになる可能性だってゼロじゃないわ!」


ルル:「あぁそうかい、勝手に好きになってくれ」


マーサ:「はぁ~~!プリリンに会いたい!次はアタシも今月の祝辞でコール&レスポンスするのよ!」


ルル:「独特な文化すぎるだろ」


マーサ:「案外これが流行るかもしれないわよ!アタシ達は最先端を見つけたのよ!」


ルル:「そりゃあよかったですね」


マーサ:「話は終わらないわよ」


ルル:「なんでだよ。今ので終わりでいいだろ」


マーサ:「会えるのは一か月後なんてアタシ耐えられないの」


ルル:「だろうな。過去の配信でも漁ればいいんじゃないか」


マーサ:「もうお気に入りしてるわ当たり前じゃない」


ルル:「こわ」


マーサ:「なによ」


ルル:「本音が零れただけだ、気にするな」


マーサ:「でね、プリリンのこと調べたのよ。そしたら不思議なの」


ルル:「何が?一人で歌ってるのがか?」


マーサ:「歌ってるのは最高よ、何も疑問はないわ」


ルル:「じゃあ何が不思議なんだ」


マーサ:「あのね、月一のライブ以外何をしているかの情報が全くないのよ」


~間~


ヒナ:「ふわぁ・・・あれ、また私寝ちゃったんだ」


ヒナ:(N)目を覚ますと、やっぱり隣には寝ている君。

規則正しい呼吸が聞こえてくる。そんな静かな朝が今日もやってきた。


ヒナ:「リュウはやっぱり寝坊助さんだ」


~リュウを起こさないようにそっとベッドから出て、廊下に出るヒナ~


ヒナ:「ちょっとだけお散歩しようかな」


ロウゼル:「おや、ヒナさん早起きですね、おはようございます」


ヒナ:「ロウゼル!おはよ!」


ロウゼル:「朝から元気ですね。体調が優れないとかはありませんか」


ヒナ:「うん!元気いっぱいだよ!」


ロウゼル:「なら良かったです」


ヒナ:「朝ごはんできてる?」


ロウゼル:「できておりますよ。食べますか?」


ヒナ:「リュウが起きたら一緒に食べる!」


ロウゼル:「承知しました。恐らく王子はもう少し寝ていると思いますので、起きたらお呼びしますね」


ヒナ:「うん!ありがと!・・・ねぇロウゼル」


ロウゼル:「なんでしょうか」


ヒナ:「最近リュウ忙しいの?」


ロウゼル:「毎月曲とダンスを覚えるのは大変みたいですよ」


ヒナ:「楽しいのに~」


ロウゼル:「ヒナさんはそういうの得意そうですね」


ヒナ:「好きだよ!たたんっ、ってしてキラキラってするとできるの!」


ロウゼル:「あはは、今度王子に教えてあげてください」


ヒナ:「そうする!あーでも、私が教えたら今以上に振り回しちゃいそう。そしたら疲れちゃうよね。それはやだなぁ。最近どんどん起きるのが遅くなってるもん。前は私より早く起きてたのに、今は私の方が早起きさん!」


ロウゼル:「・・・きっと私たちには見えない大変なことがあるんですよ。元気になったら教えてあげてください」


ヒナ:「うん!そうする!

ご飯の時間までお散歩してきてもいい?」


ロウゼル:「もちろんいいですよ。街には下りないように気を付けてくださいね」


ヒナ:「わかった!行ってくるね!」


~ヒナを見送るロウゼル~


ロウゼル:「全てを知っているのと何も知らないのとではどちらが辛いんでしょうね」


~間~


~マーサとルル~


ルル:「お前に言われて簡単に調べてみたけど、確かに情報がなかった」


マーサ:「そうなの。握手会とかツアーとかやってる気配もない。王子としての何かをしているわけでもない。本当に月一回しか表に出てないらしいの」


ルル:「あくまでメインは王子のはずだよな。何かしら仕事してる実績はあると思うが・・・」


マーサ:「ないから不思議って言ってるじゃない」


ルル:「ダンスとかのレッスンしてんじゃねぇの」


マーサ:「それはしてると思うわ。でも、アイドルという売り出し方をしてるならもっと前に出てもいいと思うでしょ?」


ルル:「それはそうだな。考えられるとしたら本当に月一で動いてるのか、あるいは」


マーサ:「王子以外の何か役割があるか。しかも極秘のね」


ルル:「・・・お前はどっちだと思うんだ」


マーサ:「ファンとしてはアイドルのためにレッスン頑張ってると思うわ!ダンスも歌も頑張る王子ってそれだけで萌えよ!」


ルル:「マーサとしては」


マーサ:「極秘の何かは絡んでると思うわ。あまりにも情報がなさすぎる」


ルル:「俺もそう思う。が、それがわかったからってどうするんだ」


マーサ:「情報がないなら本人に聞けばいいのよ」


ルル:「そうだなまずは聞き込みから・・・ん?」


マーサ:「アタシ、憶測は嫌いなの!だから直接聞くわ!もしかしたらほぼほぼ暇かもしれないんだったら、見つけて聞き出しましょ!」


ルル:「待て待て待て。王子を連れて来るのか」


マーサ:「プリリンの家に乗り込むでもいいわ!」


ルル:「やめろ!乗り込んだら俺らがどうなるかわらかねぇんだぞ!?」


マーサ:「あら、アタシが簡単にやられると思う?」


ルル:「そこは問題ないと思う。だってヒーラーの俺が役割を果たしたことないままここに来てるからな」


マーサ:「でしょう?アタシちゃんと強いんだから」


ルル:「ただな、武力で勝てても法では勝てないんだ。相手は仮にも王子だぞ。乗り込むのは危険すぎる。そもそも居場所わからないだろ」


マーサ:「何言ってるの推しの居場所を把握するのはファンの鉄則よ!」


ルル:「・・・まじ?」


マーサ:「まだ噂を繋げただけどある程度はね」


ルル:「こわぁ・・・」


マーサ:「アタシはね、推しが悪いことしてなければいいの。あ、でも、復讐とか考えてたら手助けしちゃうかもっ。キラキラアイドル王子が実は闇堕ちしてるのたまらないわ!」


ルル:「俺はついていけねぇよ」


マーサ:「無理やり引っ張ってあ・げ・る」


ルル:「はぁ~やだやだ。こいつのせいで知らないやつの復讐を手伝うかもしれないなんて最悪だ」


マーサ:「まずは真実を確かめるわよ!」


ルル:「まさか今から行かないよな?」


マーサ:「まだ行かないわよ、情報が集まってないもの。アタシはちょっと情報収集に出てくるわ。なるべく早くプリリンの真実を知らなくちゃいけないもの!これはファンとしての使命よ!」


ルル:「止めても無駄だろうから止めねぇけど、俺たちの目的を忘れてねぇよな」


マーサ:「まさか。聞けたらそっちも探ってくるわよ」


ルル:「あぁ、頼む。気を付けて行って来いよ」


マーサ:「任せて。行ってきます」


ルル:「・・・マーサ!」


マーサ:「なによ」


ルル:「夜になる前に帰って来いよ。怪物が現れる前に」


マーサ:「わかってるわよ」


~間~


リュウ:「・・・しばらく星を見てないな。あの頃は毎日見てたのに。きっとここから見ると綺麗なんだろうな」


ヒナ:「リュウ」


リュウ:「ヒナ、どうしたの」


ヒナ:「お昼ご飯できたって。食べよ」


リュウ:「ありがとう、今行く」


ヒナ:「むぅ(リュウの顔を凝視する)」


リュウ「ヒ、ヒナ?顔が近いよ?」


ヒナ:「疲れてる」


リュウ:「へ?」


ヒナ:「リュウ、疲れてるでしょ」


リュウ:「そんなことないと思うけど、身体だっていつも通りだし・・・」


ヒナ:「でもなんか違う!疲れてる!休んで!」


リュウ:「ありがとう。僕はこれでも休んでるから平気だよ」


ヒナ:「でも!」


リュウ:「最近、ヒナより遅く起きてるだろ?それが何よりの証拠だよ」


ヒナ:「・・・」


リュウ:「心配してくれてありがとうヒナ」


ヒナ:「リュウはいつ寝てるの?」


リュウ:「え?」


ヒナ:「遅く起きてるってことは、遅く寝てるってことかもしれないじゃん。私はリュウが寝る前に寝ちゃってるからわかんないけどさ・・・」


リュウ:「ヒナ?」


ヒナ:「なんか、胸がざわざわするんだ」


リュウ:「ざわざわする?」


ヒナ:「うん。なんか、なんかね、何かわかんないけど変な気がする」


リュウ:「・・・」


ヒナ:「特に変わったことはないはずなんだけどね。なんか嫌なの」


リュウ:「そっか」


ヒナ:「ん~~、あっ!わかった!リュウが寝るまで私も起きていればいいんだ!」


リュウ:「起きられるの」


ヒナ:「リュウと一緒なら起きれるよ!」


リュウ:「ふふ、そうだね。じゃあ今日の夜一緒に星を見よう」


ヒナ:「星?」


リュウ:「うん。星。ここは街から離れているから星が綺麗なんだ」


ヒナ:「へぇ~そうなんだ!見たい見たい!お菓子持って行ってもいい?」


リュウ:「もちろんいいよ」


ヒナ:「やったぁ!ロウゼルに頼んでおこうっと!へへへっ、楽しみ~!そういえばここに来てから星とか見たことないかもっ!」


リュウ:「ヒナはすぐ寝ちゃうからね」


ヒナ:「うーん、いつの間にか寝てるんだよね。そしていつの間にか朝になってる!不思議だよねぇ」


リュウ:「そうだね。星をゆっくり見れるように今日の晩御飯は早めにしてもらおうか」


ヒナ:「うん!そうだね!」


ロウゼル:「その前にまずはお昼ご飯ですよ」


ヒナ:「ロウゼル!」


リュウ:「ごめん、待たせちゃったね」


ロウゼル:「よいのですよ。何やら楽しそうなことを話してらっしゃいましたね」


ヒナ:「今日の夜、リュウと星を見るんだ!」


ロウゼル:「それは素敵ですね。私もご一緒しても?」


ヒナ:「もちろんいいよ!」


ロウゼル:「では、お菓子とココアを用意しておきますね」


ヒナ:「やったぁ!さっすがロウゼルわかってる!」


リュウ:「ありがとう、手間をかけさせるね」


ロウゼル:「いえいえ、これは私の仕事ですから。ささっ、お昼ご飯の美味しいサンドイッチが待ってますよ」


ヒナ:「わぁいサンドイッチ!サンドイッチ!早く行くよ!リュウ!(リュウの腕を引っ張る)」


リュウ:「っと!急に引っ張らないでよ!」


~間~


ロウゼル:「さて、お菓子は何がいいですかねぇ。マシュマロ、金平糖、やはり王道のクッキーしょうか。確かここら辺にクッキーがあったはず・・・あったあった。(クッキー缶を開ける)っと。あ・・・花形のクッキーでしたか。・・・これはまた別の機会ですね」


リュウ:「ロウゼル」


ロウゼル:「王子、なにか御用ですか」


リュウ:「少し出かけてくる。星を見るために合いそうなものも探して来ようと思って」


ロウゼル:「承知致しました。私もご一緒しましょうか」


リュウ:「君はヒナと一緒にいて。星を見るのとても楽しみにしてて落ち着きがないんだ」


ロウゼル:「「早く夜にならないかな~」って言ってるのが想像できますね」


リュウ:「でしょ?なるべく早く帰ってくるよ。僕も星を見るのは久しぶりなんだ」


ロウゼル:「見れるといいですね」


リュウ:「見れるよ、きっと」


ロウゼル:「はい」


リュウ:「じゃあ行ってきます」


ロウゼル:「行ってらしゃい。王子」


~間~


マーサ:「おはよ」


リュウ:「え?」


マーサ:「やっと起きたわぁ!おはよう!プリリン!」


リュウ:「ぷり・・・え?」


マーサ:「あなたのことよ!あっ、自己紹介してなかったわね!アタシはマーサ!あなたに一目ぼれしたの」


リュウ:「・・・僕に?」


マーサ:「そう、だから色々調べてみたの!そしたら気になることがあったらちょ~っと強引に連れてきちゃった。手首と足を拘束してるけど痛いことはしないから安心してねん」


リュウ:「・・・何が目的だ」


マーサ:「やんっ、怒った顔も可愛いのね!改めて推しが目の前にいるって実感するわぁ!うふふっ!」


リュウ:「いいから、用件を言え。僕は早く帰りたいんだ」


マーサ:「ずぅっとここにいてもいいのよん」


リュウ:「それはダメだ」


マーサ:「なんでよぅ!あっ、そうだ!お近づきの印にこれあげる!あなたをイメージしたブーケ!」


リュウ:「(一気に拒絶の顔に変わる)やめろ!!!!」


マーサ:「え?」


リュウ:「やめてくれ・・・。その花を僕の見えないとこに置いてくれ・・・頼むから・・・」


マーサ:「わ、わかったわ。お花苦手だった?ごめんなさいね。喜んでもらおうと思っただけなのよ」


リュウ:「いや・・・こっちの都合だ・・・いいんだ・・・」


マーサ:「すごい汗じゃない。どうしちゃったのよ」


リュウ:「・・・答えたくない」


マーサ:「そう。推しが拒否したことはそれ以上踏み込まないわ」


リュウ:「早く用件を言え」


マーサ:「せっかちさんねっ!そういうとこも可愛いっ!

いいわ、話を進めましょう。あなたは本当は何者なの?」


リュウ:「は?」


マーサ:「キラキラアイドル王子以外に何かやってるんじゃないかな~って思ったのよ」


リュウ:「やってたとしてそれは僕の勝手だろ」


マーサ:「えぇそうよ。何をしようがあなたの勝手だわ。アタシは気になるから聞いてるだけよ。ファンとしてあなたの全てを知りたいの」


リュウ:「は?」


マーサ:「うふふ」


ルル:「厄介オタクに捕まったってことだ。諦めろ」


リュウ:「誰だお前」


ルル:「俺はルル。こいつの・・・まぁ、一応回復役だ。一回も回復を唱えたことないけどな」


マーサ:「アタシ、強いからね」


ルル:「で、そいつは本気でお前を知りたいだけだ。言えること言った方が早く帰れるぜ」


リュウ:「言うことなんて何もない」


マーサ:「そんなはずないわ。王子という立場のあなたが月一回だけ仕事をしているなんてありえないもの」


ルル:「王子にしては情報がなさすぎるからなぁ。何か隠してるのが相場だろ」


マーサ:「たとえあなたが復讐しようと企んでいるとかでもアタシは受け入れるわよ!なんならお手伝いしちゃうんだからっ」


リュウ:「復讐とかは考えてない」


ルル:「よかった。俺の復讐道連れルートはなくなった」


マーサ:「じゃあ、王子としての務めがない時は何してるの?今日だって普通に街に出てきたじゃない。嬉しくなっちゃって首をトンッ、ってしちゃったわ」


ルル:「嬉しくなって誘拐紛いのことをしてるのは俺から謝ろう。申し訳ない。だから訴えるのだけは勘弁してくれ」


マーサ:「なによ~、目の前に急に推しが出てきたらびっくりするでしょう!」


ルル:「力加減バカのせいで全然起きなかったじゃねぇか。もう夜になるぞ」


リュウ:「・・・夜?待って、今何時なの」


マーサ:「もうちょっとで19時になるわね」


リュウ:「っ!早く僕を解放しろ!」


ルル:「なんだよ、見たいもんでもあんのか?」


リュウ:「ヒナが・・・。とにかく危険なんだ!!」


~間~


ヒナ:「リュウ遅いなぁ」


ロウゼル:「久しぶりに星を見ると仰ってましたから、張り切ってるのかもしれませんね」


ヒナ:「そうなのかなぁ~。でももう夜ご飯の時間も過ぎてるよ?」


ロウゼル:「そうですね。先に食べられますか?」


ヒナ:「ううん!リュウが帰ってきたら一緒に食べる!」


ロウゼル:「左様ですか。ヒナさんはどうして、王子と一緒が良いのですか?」


ヒナ:「なんで?一緒に食べた方が楽しいじゃん!」


ロウゼル:「ふふ、聞かなくてもわかることでしたね」


ヒナ:「独りで食べるのってつまんないもん。美味しいはずなのに美味しくない。でも、リュウとかロウゼルとかと一緒に食べればいっぱい美味しい!」


ロウゼル:「そう言っていただき光栄ですよ」


ヒナ:「私ね、たくさん覚えてられないから楽しいことは覚えておきたいなって思うんだ」


ロウゼル:「よいことだと思いますよ」


ヒナ:「ねぇ、ロウゼル」


ロウゼル:「はい」


ヒナ:「私っておかしいんだ」


ロウゼル:「どうされましたか急に」


ヒナ:「私ね、いつの間にか寝てるの。そしていつの間にか朝になる。夜の記憶がほぼないんだ。生まれた時からずっと」


ロウゼル:「深い睡眠はよいことですよ」


ヒナ:「眠くなる感覚さえわからないの」


ロウゼル:「・・・」


ヒナ:「そしたらさ、ここに来てからは目が覚めたらリュウが傍にいるの。なんだか安心する」


ロウゼル:「王子も同じことを言ってましたよ。安心するって」


ヒナ:「ほんと?にへへ、嬉しいな」


ロウゼル:「ヒナさんは夜を知りたいですか」


ヒナ:「知りたい。でも、ちょっとだけ怖い」


ロウゼル:「・・・わからないことは怖いですよね。でも、知ってしまったら元に戻せないこともあるのですよ」


ヒナ:「夜って怖いもの?」


ロウゼル:「少なくとも私は・・・罪の時間です」


ヒナ:「罪の時間?」


ロウゼル:「はい。助けたのか助けられなかったのか。今でもわかりません。ただ、あの人には申し訳ないと思います。いつも見てるだけで何もできずに自分の罪を感じるのが私にとっての夜です」


ヒナ:「夜は罪の時間・・・。罪の時間だから私の記憶もないの?」


ロウゼル:「そうだったとしたら・・・納得しますか?」


ヒナ:「わからない。だって私の罪が何か私が知らないんだもん」


ロウゼル:「ヒナさんに罪はないんです」


ヒナ:「ほんと?」


ロウゼル:「はい」


ヒナ:「じゃあこのままでもいいのかな」


ロウゼル:「ヒナさんが思うようにすればよいと思います。私からはなにも」


ヒナ:「そっか。じゃあ、いつか教えてね。私の夜がなんなのか」


ロウゼル:「はい。その時は王子も一緒に」


ヒナ:「うん」


ロウゼル:「先にココアを持ってきますね」


~部屋から出て行くロウゼル~


ヒナ:「私にとっての夜・・・か・・・。あっ、あれが星かな!・・・きれーい!・・・いかなきゃ、ヨルだ。いかナきゃ、イカナキャッ!」


~少しの間~


ロウゼル:「ヒナさんお待たせしました・・・え」


~部屋にヒナの姿はない~


ロウゼル:「ヒナさん?・・・返事がない。まずい、ヒナさんが外に出たらここら一帯がなくなる!

どこに行ったんだよ・・・!リュウ・・・!」


~間~


マーサ:「危ないってどういうことよ」


リュウ:「君たちだって夜の怪物の噂は知ってるだろ」


ルル:「あぁ、知ってるよ。誰も止められない夜の怪物。そいつが現れれば街なんて簡単に消える」


リュウ:「そうだ」


マーサ:「その怪物が出るってこと?でも、最近出てなかったじゃない」


リュウ:「それは僕が」


ヒナ:「タベなきゃ・・・アハハハッ!」


リュウ:「っ!」


マーサ:「何、今の声」


ルル:「外からだ」


マーサ:「プリリン待ってて、アタシがやっつけてくるから!」


リュウ:「待て!行くな!!」


~リュウの言葉も聞かず出て行くマーサ~


ルル:「その様子だとお前は知ってんだな。夜の怪物を」


リュウ:「知ってる。ゆっくり話してる暇はないんだ。早くこの拘束を解いてくれ!」


ルル:「止められるのか。あいつを」


リュウ:「僕なら止められる」


ルル:「・・・信じるぞ」


~リュウの拘束を解く~


リュウ:「ありがとう。とりあえず外に行くよ!」


ルル:「あぁ」


~外に出る二人~


マーサ:「なによあれ。女の子が浮いてる?」


ヒナ:「オイシソウだなァ・・・!タベタイナァ!!キャハッ」


リュウ:「ヒナ!!!」


ヒナ:「タベナキャアァァ!!」


マーサ:「っ!あの子が夜の怪物?!」


ルル:「どう考えてもそうだろ!」


ヒナ:「オイシイノ・・・ホシいナァ・・・!!」


マーサ:「怪物!こっちよ!アタシが相手してあげる!!」


ヒナ:「ホシイ・・・ホしイ・・・ナッ」


ルル:「ダメだ聞こえてないぞ」


マーサ:「絶対に倒してやるっ!そのためにアタシは強くなったんだから!!」


リュウ:「殺すな!!」


マーサ:「なんでよ!あいつは夜の怪物なのよ!!簡単に街を消せる化け物なのよ!!倒すしかないじゃない!!」


リュウ:「あいつは僕の知り合いだ」


マーサ:「いくらプリリンと言えど、そんな嘘通用しないわよ」


リュウ:「嘘じゃない!!!嘘じゃないから・・・僕に任せてくれないか」


マーサ:「何言ってんのよ!アタシたちはね!あいつのせいで人生めちゃくちゃなのよ!だから絶対殺すって決めてんの。ルルもそうでしょ!」


ルル:「・・・」


マーサ:「ルル!!そうでしょ!!」


ルル:「確かにマーサなら倒せるかもしれない。けど、」


マーサ:「なに迷ってるのよ!」


ルル:「お前こそ!真実を知りたかったんじゃないのかよ!!王子が裏で復讐でも何でも付き合うんじゃなかったのかよ!!なんで今、そいつの言葉を聞かねぇんだよ!!」


リュウ:「っ!二人共!避けろ!」


ヒナ:「タベナきゃアアあああぁ!!!!」


~三人に向かって攻撃が来る~


マーサ:「くっ!」


ルル:「マーサ!」


マーサ:「アタシは平気!でも、このままじゃまた街がなくなる!」


リュウ:「ヒナ!!僕だよ!リュウだよ!!わかるだろ!!」


ヒナ:「ウフフ、アハハハッ!!」


リュウ:「ダメだ。声が届いてない・・・」


ルル:「どうすんだよ」


リュウ:「あいつは人を食べると落ち着くんだ」


マーサ:「誰かを犠牲にしろってこと?!」


リュウ:「だから僕を食べさせる」


ルル:「お前何言ってんだよ!!そんなことしたら死ぬぞ!!」


リュウ:「普通ならね。でも僕は死なないから安心して」


ルル:「どういうことだよ」


リュウ:「詳しいことはどっかで説明する。今はヒナに僕のことを認知させるのが先だ!」


マーサ:「こっちも見向きもしないのにどうするのよ!!」


リュウ:「なにか・・・なにか・・・気付く方法は・・・」


ルル:「何とかしろよ!アイドル王子!!」


マーサ:「アイドル・・・それよ!」


ルル:「はぁ?」


マーサ:「歌ならきっと、届くわ!だってプリリンの歌だもの!」


リュウ:「そうかそれなら!」


マーサ:「少しでも目線に入るように高いとこに行きなさい!時間稼ぎは任せて!!」


リュウ:「ありがとう!」


~高い建物に向かうリュウ~


マーサ:「ねぇ!今のかっこよくなかった!かっこよかったよねアタシ!!」


ルル:「その一言がなけば完璧だったな」


マーサ:「なによ。素直じゃないわね」


ルル:「今はあいつだ。いけるか」


マーサ:「アタシを誰だと思ってるのよ!」


ルル:「好きなだけ暴れてこい。どんな傷だって俺が治してやる」


マーサ:「いつも通り指くわえて終わるに決まってるじゃないっの!」


~剣を出し、ヒナに向かっていくマーサ~


マーサ:「あなた、プリリンに好かれてるらしいじゃない。そんなのっ!許さないんだからッ!」


ルル:(N)マーサの大剣は怪物目掛けて一直線に切りかかる。が、怪物が片手を払うと凄まじい風がマーサを襲う


マーサ:「こんのっ!!」


ルル:(N)態勢を立て直しもう一度切りかかる


ヒナ:「ウルサイ。ウルサイ。ウルサイッ!」


ルル:(N)怪物が暴れ出す。真正面に来ていたマーサがとてつもないスピードで地面に叩きつけられる


マーサ:「かはっ」


ルル:「マーサ!!」


ヒナ:「ゼンイン、キエちゃえ!!キエチャエェえええぇぇぇ!!!」


ルル:(N)もうだめだと思ったその時、歌が聞こえた


マーサ:(N)その声は間違いなく、アタシが一目惚れした声だった。この場に合わずキラキラしてて、でも優しくて


ルル:(N)見上げると、建物の屋上に、王子がいた


リュウ:(N)ヒナの動きがピタリと止まる。そうだ。僕の歌を聞いて。君が言ったんだ。あの初めて会った日に、君がアイドルになってって。無邪気な顔で僕に言ったんだ。そのせいで僕は歌って踊るアイドル王子という意味が分からない仕事をすることになった。でも、君に歌が届くなら、僕は下手でも歌い続けるよ


ヒナ:「ウタ・・・」


リュウ:「ヒナ。僕だよ、リュウだよ」


ヒナ:「リュ、ウ・・・?」


リュウ:「そう、リュウ。やっと目が合ったね」


ヒナ:「リュ、ウ・・・」


リュウ:「ほら、こっちおいで」


ヒナ:「アァ・・・」


リュウ:「いい子だ。ヒナ」


ヒナ:「イイニオイ・・・」


リュウ:「僕を、食べて」


ヒナ:「・・・イタダキマァアアアスッ!!!」


マーサ:「プリリーーーーーーン!!!!」


ルル:(N)ガブりと、王子の上半身まで飲み込んだ怪物はそのまま横に引きちぎり、もぐもぐと食べた。目の前に先ほどまで歌っていた人物の下半身だけが落ちてくる。正直、何が起きているかわからなかった


マーサ:「いや・・・いやああああぁ!!」


ルル:「やっぱり・・・やっぱり死ぬじゃねぇか・・・」


マーサ:「アタシの、アタシのプリリンを!よくも!」


ルル:「待て!マーサ!!」


マーサ:「離して!!殺さなきゃ!!あいつを殺さなきゃ!!!」


ルル:「あいつを見ろ!!」


マーサ:「なによ!!!・・・えっ」


ルル:(N)静かに床に怪物が倒れた。さっきまの様子とは違い、怪物だったそれは、寝息を立てる普通の女の子になっていた


ヒナ:「すぅ・・・すぅ・・・」


マーサ:「ほんとに・・・落ち着いたの・・・?」


ロウゼル:「ヒナさん!リュウ!無事か!!」


ルル:「なんだお前」


ロウゼル:「リュウの・・・あぁ、王子の使用人みたいな者です。お二人は怪我はありませんか」


マーサ:「えぇ、平気よ」


ルル:「嘘つくな。怪我人が」


マーサ:「だって、これくらいプリリンに比べたら」


ルル:「ほら、これで本当に平気だ」


マーサ:「あ、ありがとう。じゃあこのままプリリンも」


ルル:「それは無理だ」


マーサ:「なんでよ」


ルル:「俺が治せるのは傷や怪我だ。肉体を生み出すことはできない」


マーサ:「なによ・・・なによ!!」


ルル:「マーサ」


マーサ:「さっき、アタシに暴れてこいってかっこつけたくせにっ!どんな傷でも治してやるって言ったくせに!!治せないものあるじゃないのこのばかぁ・・・!!」


ルル:「・・・ごめん」


マーサ:「バカ!ばかばかばか!・・・っ!ばか・・・」


ルル:「・・・ごめん。ほんとにごめん」


ロウゼル:「王子は大丈夫ですよ」


マーサ:「は?・・・何言ってんのよ、だって、上半身が」


ロウゼル:「さすがにここまでは久々ですが、彼の治癒能力・・・いえ、不死身の力なら問題ないですよ」


ルル:「不死身?」


ロウゼル:「彼は昔病気で、色々な医者に拒絶をされていました。それはもう治らないと何度も言われていた。しかし、一人だけ受け入れた人がいたんです。そして彼は病気が治った。代わりに死ねない身体になりました」


ルル:「どうして・・・」


ロウゼル:「医者じゃなかったんです」


マーサ:「はぁ?どういうこと。医者が受け入れたんじゃないの」


ロウゼル:「研究者だったんです。永遠の身体を求めていた研究者の最初で最後のモルモットがリュウです」


ルル:「じゃあ・・・あの状態でも生きてるのか・・・?」


ロウゼル:「生きています。ゆっくりゆっくり元の形に戻っていくんです。それを見守るのが私の、研究者としての役目です」


ルル:「お前が・・・受け入れた研究者ってことか?」


ロウゼル:「違います。実験をしたのは私の同期です。私は同じ研究をしていたただの研究者でした。リュウの実験が成功したと喜んだ同期は、自分で同じように薬を飲みました。そしてすぐに死にました。バカなやつです」


マーサ:「・・・プリリンのことはなんとなくわかったわ。じゃあその女の子はなんなのよ」


ロウゼル:「ご想像通り、一瞬で街を消せるほどの力を持つ夜の怪物がヒナさんです」


ルル:「なんでこんな危険な奴生かしてるんだよ」


ロウゼル:「ヒナさんは悪くないからです」


マーサ:「はぁ?!どう足掻いても悪い奴じゃない!100パー悪いわよ!」


ロウゼル:「本人の意思はないんですよ。どうして怪物になるのか原因はわかっていません。ただ、夜になると意思とは関係なく怪物になる。そして人を食べれば落ち着く。このことだけわかっています」


ルル:「おい、まさか・・・」


ロウゼル:「そのまさかです。原因がわからないと再発が起きるかもしれない。だからわかるまでは不死身の人間を食わせて時間稼ぎをしよう。それが今のヒナさんとリュウの関係です」


マーサ:「・・・プリリンはそれを知ってるのよね。だから迷いなく食べられた」


ルル:「わかってても簡単にできることじゃないだろ・・・」


ロウゼル:「死体から人間になったのを見届けてからベッドに寝かせる度に不思議です。どんな姿になっても時間が経てば呼吸してるんですから。それでもいつかは死ぬかもしれないんです。けど彼はヒナさんを止めるためなら自分を差し出すんです」


マーサ:「プリリン・・・」


ロウゼル:「見知らぬ方々に話過ぎましたね。ヒナさんとリュウは私の方で預かります。お二人共、ゆっくり休んでくださいませ。あと、このことは他言無用でお願いします。それでは」


ルル:「・・・なぁ」


ロウゼル:「はい」


ルル:「あんたは何度、王子が死ぬとこを見てきたんだ」


ロウゼル:「・・・。さぁ、もうわからないほど見ています。でも、私が死ぬまでは見届けるつもりです。リュウを不死身という地獄に巻き込んだのは私の罪ですから」


ルル:「・・・」


マーサ:「・・・」


ロウゼル:「それでは、失礼します」


~間~


ヒナ:「ん・・・ふわぁ、もう朝かぁ・・・」


ヒナ:(N)目を覚ますと、いつも隣には寝ている君。

規則正しい呼吸が聞こえてくる。そんな静かな朝


ヒナ:「ふふ、リュウは寝坊助さんだね」



~終わり~

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月夜の守護者 菜乃花 月 @nanohana18

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