第10話部屋に戻っても日常には戻らない 3

かれこれ一時間くらいは経っただろうか。すぐに宿題は終わり凛花の話しに付き合っていた。

しかし、凛花はいっこうに帰る気配を見せない。

「やっぱりコホラのメンバーが再集結するのは激アツだったよね」

この様子でわかるだろうが相当なオタクだ。

「まあ・・・・・・そうだね」

その後の展開を知っているためそこまで賛同できない。

「もう、話しちゃんと聞いてる?」

聞いているからこその反応なんだけどな・・・

「聞いてる」

「・・・・・・キスして」

「嫌だ」

「じゃあハグ」

「嫌だ」

「キスしないで」

「ああ」

「なんで引っ掛からないの?」

役に何故これで引っ掛かると思ったのか謎である。

「こんなんで承諾得ても嬉しくないだろ」

「まあ、そうだね・・・・・・それにしても僚太くんはやっぱり陰キャではないよね?」

凛花は気まずくなったのか話題を変える。

「いや、充分陰キャだと思うけど」

「じゃあどんな人が陰キャだと思う?」

凛花の言葉に否定すると、改めて聞かれると少し悩む問いが帰ってきた。

「・・・クラスで目立たない人のこと?」

確証が持てないため疑問系になってしまう。

「じゃあ、今日で陰キャ卒業だね」

・・・・・・・・・・・・

確かに今日は目立っていた。凛花のせいで。

「どちらかと言えば目立っていたのは」

「目立ったことには変わりないでしょ?」

せめてもの抵抗をしようとするが途中で凛花に割り込まれる。

これは否定できない。

「もしかしてこれが目的?」

陰キャの脱陰キャさせるためにここまでしたとは考えにくいが最近大幅にイメージが変わりつつある凛花ならばもしかして、と考えた。

「不正解」

「じゃあ、結局何が目的なんだ?」

聞き逃したことを聞いてみた。

「まだ、言えません」

突然敬語に戻ったため本当に何か重大な理由があるのかもしれない。

詮索できそうな気配ではないことを察したが一つの可能性を思い付き聞いてしまった。

「もしかして母親絡み?」

凛花の父親の話は出たが母親の話は聞いていない。

「ああ、話してなかったかな・・・・・・お母さんは私が5才の頃に・・・・・・」

その後は聞かなくてもわかった。

聞いたことのある話だが、まあ違うだろう。

「ごめん」

それから居づらくなったのか凛花が部屋から出ていった。

それは良かったのだが非常に後味が悪くなってしまった。



翌朝。

「おはよう。僚太くん」

昨日のことを忘れたかのように挨拶をされた。

「おはよう」

一言だけ返し朝食を食べ始めた。



1限目。英語。片山先生休み・・・・・・

嫌な予感は当たるものでまたプリントを各自で解く授業が始まり、凛花が椅子だけ持ってきた。

昨日休んでいた隣の子が来たため僕の席の近くに空いている机がなかったためだろう。

「ふふ、また隣だね」

なんというかすごく「また」を強調していた気がする。

昨日に引き続きなので昨日よりも衝撃は少なかったようだが女子は様子をうかがうように、男子はこちらを射殺す勢いで睨んでいる。

この目立ち方で本当に陰キャ卒業できているのか疑問である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る