第8話部屋に戻っても日常には戻らない

「約束もう忘れたの?」

約束・・・・・・あ、そういえば漫画を読ませるって昼休みに話したっけ?

「コホラね、ちょっと待って」

そう言いながら本棚のところに向かいコホラの最新刊をとり手渡す。

「ありがと。それにしても自営業なのにこの家建てられてるってすごいね」

「じいちゃんがやり手だったみたい」

実際今は生活は出来てもこれほどの家を建てられるほど儲かってないはずだ。

「へぇ~、そういえばコホラの小説の新刊は結構前だったよね?」

「ああ、あれ実は2週目だから」

アニメに合わせて初めから読み始めているのだ。

一期から2クールあるので言わずもがな人気作だ。今日の昼読んでいたところは多分アニメでは折り返し地点位の内容だろう。アニメは今7話目位だったかな。もう少しであの場面がアニメになる。

「やっぱりコホラ面白いよね。アリスが主人公大好きなのに主人公はそれに気づかないってところはアリスの気持ちがよくわかるなー」

なんか遠回しに告白されている気がする。

「はいはい、それでいつまでいるつもり?」

「気が済むまで」

おいおい、てかそもそも男の部屋に来るって・・・・・・

本当に今さらだったわ。諦めよう。

僕はパズレンでガチャでも引こうかな。

それにしてもお父さんはハマりすぎている気がする。

パズレンの更新時間は朝9時であり、それをすぐにプレイするために木曜日を休みにしていたはずだ。

つまりガチャをその時間に一度は引いているはず(お父さんはガチャ好き+新しいガチャが来る前には10連以上引けるようにしている。)

そのためガチャを引くための道具、卵石を集め直しもう一度引いたことになる。

それをするために仕事を休みにするという行動力を凄いとは思うがゲームに振り回されているとも思っていた。先日の迎えの時車で寝ていたのもこのゲームをしてたからに違いないと確信していた。


聞き慣れたBGMが流れ始め画面には今日の更新で実装されたキャラが映し出された。

清楚系な女性の剣士そういう印象を受ける。どこかの小説や漫画の主人公であってもおかしくないほど細かく描かれている。

断言しておくがエロゲではない。もう一度言うがエロゲではない。

ただ、たまたま新キャラが女性だっただけのことである。

衣装も露出少なめだしこのゲームは全年齢対象のゲームである。

後、親がいくらハマっているとはいえ息子にエロゲを紹介するわけがない。


というわけで新キャラのステータスを見に行く。

ステータスに特徴はそこまでない。

スキルは・・・・・・バフか。ってことは不遇キャ・・・いや、倍率がおかしいな。

不遇じゃなくて良遇され過ぎているキャラだ。今までバフはそこまで強くなかった。

それは倍率が低かったのもあるが何よりバフをかけられる相手に制限があった。

例えば種族であったり、属性であったり色々だ。

それが今回は倍率が倍以上に上がっただけでなくかけられる相手の制限が一切ないスキルになっていた。

これは明らかに強いな。お父さんがあれだけ悔しがるのもわかる。

しかも、確かもう少しで5周年。そこで良いキャラが確定で登場するため皆ガチャには消極的になっている。そのタイミングでこんなキャラを出してくるとは・・・・・・

5周年に期待が高まるが、さすがにこの性能を見て一度も引かないわけにはいかない。

幸い最近はそこまでガチャを回していなかったため卵石は50連分持っている。

ガチャの画面にとぶとそのキャラのスキル演出が流れてきた。

どうやら味方を鼓舞しながら戦うといったキャラ設定のようだ。

スキル演出を見届けた後、そのガチャの10連を引くというボタンをタップする。

卵石を50個消費します。よろしいですか。

という文章と共にYesとNoというボタンが現れる。

迷わずYesを選択する。

画面が切り替わり探検隊がパズルの壁の前に立っている背景と共に引けという文字が表示される。

引いてから放すと探検隊が10枚のパズルの壁を突き破る演出が流れる。

パズルの色は銀9枚と金1枚。最高ランクは虹のため外れたかと思ったが、

「あきら・・・・・・めるな」

暗転と共に先程スキル演出が流れてきた時のボイスと同じ声でそう流れた。

これは確定演出だろう。

10枚のパズルが再度出てきて金色だったパズルには後ろから虹色の光が差し込んでいる。

タップすると銀色のパズルが徐々にキャラに変わっていく。

見入手のキャラの場合止まりゆっくりとした演出になるのだが僚太もそれなりにやっているため銀色のパズルで止まることはない。

そしてついにその時が訪れる。

「今日より私がこの軍の指揮を行う。皆の者ついてこい!」

ボイスと共にそのキャラが出てくる。

「よっっっっしゃ!」

「きゃっ!ビックリした。どうしたの?」

「あ、ごめん。ってまだいたのかよ」

すっかり忘れてガチャを楽しんでいた。

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