禍筋トレ:追い込み編
羽矢歌
『禁止されたタートルネック』
バイトで家庭教師してたとき、一軒だけ変なルールがある家があって。「タートルネックを着てきちゃ駄目」っていう。意味わかんなかったけど、それ以外のところには文句も不満もなかったしぶっちゃけ給料も相場以上だったから、それくらいいいかって思ってたわけ。
いつも授業が終わったら親御さんのどっちかが玄関で見送ってくれてたんだけど、その日はお母さんで。こっちが挨拶する前に「悪いけど明日から来なくて良いから。お給料は来月分まで払うから」って言われて。
思い当たる理由もないしとにかく突然のことで返事もできずに固まってたら、「鏡、見てみなさい」って靴箱の上の鏡を指さされたから、意味わかんないけど言う通りにしたんだ。そしたら、首に変な──首をぐるっと一周する痣が付いてた。朝身支度するときには絶対になかったし、痣が付くようなことをした覚えもない。驚いてるとお母さんが、「それが付いた子は辞めてもらわなきゃいけないのよ。だからすぐわかるように、首を隠さない服装をして貰ってるの」
ってすごく嫌そうに言うから、もう何も言えなくなってすごすご帰った。それがその家に行った最後。
ああ、バイト代はちゃんと来月分まで支払われてたよ。
んで、お前も気付いてると思うんだけど──ほらこれ、そのとき付いた痣。もう何年も前のことなのに全然消えないんだよ。見てて気持ちいいもんじゃないしさ、こんな季節なのにタートルネックの服しか着られなくなっちゃんたんだ。逆だよな、逆。
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