貞操観念が逆転した世界に転生した俺は全ての部活動に共有されるマネージャーにさせられました

@HaLu_

第1話

「あっ!マネージャー!こっちにもスポドリちょーだーい!」


「はい!今行きます!」


 練習終わりの体育館を駆け回る。バスケ部の部員にスポドリを配り、その次は隣のバレー部へと向かう。


「ありがとー!ねえ明日の練習試合来てくれんの?」


「明日はバスケ部が大会なので……」


「そっかぁ…残念。マネージャーが居てくれたら私たちすっごく頑張れたのになぁ……」


「すいません…今度の大会には着いていきますんで」


「言ったな~?じゃあじゃあ放課後一緒に帰ろ?なんか奢ったげるからさぁ!」


「おいこらチャラ女!うちのマネージャーをナンパしてんじゃないよ!」


 俺がバレー部のキャプテンから言い寄られていると、バスケ部の方からキャプテンの怒号が飛んできた。


「これくらいナンパじゃないよスキンシップ!てかうちのマネージャーでもあるんだけど!」


「問答無用!ほら佐川!そっちに配り終えたなら早くボール拾いして!」


「うっわキッッッモ!このご時世にマネージャーに玉拾いさせるとか!将来はDV妻になるんじゃない?」


「まぁまぁふたりとも落ち着いて……」


 ここのふたりは犬猿の仲ってやつで、こうして喧嘩することもしばしば。その度に俺が仲裁する羽目になってしまう。





 そしてまた別の日。今日は運動場で作業していた。サッカー部のゼッケンを運んでいると同級生の女子が声をかけてきた。


「佐川くん!私も手伝います!」


「ありがとう。でもこれくらい持てるよ」


「いいからいいから!同じ1年生として手伝うのは当然です!」


「……じゃあお言葉に甘えて」


「はい!任されました!」


 俺からゼッケンの入った大きなカゴを受けとると、軽快に走りながら皆の元へと運んでいった。


「お、マネージャー。暇そうだね」


 手持ち無沙汰になってしまった俺が何か無いかと見回していると、テニス部の2年生の女子から声をかけられた。


「何かやれることはありますか?」


「そうだなぁ……あ、今からサーブの練習するからカメラで撮ってもらっても良い?」


「それくらいなら喜んで」


「マジ?ありがとっ」


 運動部は全体的に仕事量がとんでもない。それでも俺はマネージャーとして皆のためにと日々奮闘しているのだ。



 またある日は水泳部に、またまたある日はダンス同好会に。放課後は学校中を右往左往する日々を送っていた。




 俺が通っている高校の名前は東昴女子高等学校。1年前まで女子校だったらしいスポーツの名門だ。少子化の観点から今年共学化し、家が近いという理由で選んだのが俺「佐川幸太郎」だ。見た目はどこにでもいる普通の男子高校生って感じだ。可もなく不可もなく絶妙なライン。身長もギリギリ170あるくらい。


 そしてこの他人行儀な説明にも理由がある。それはこの記憶が正確には今の俺の記憶ではないからだ。所謂俺は転生者で、入学する数日前に階段から転げ落ちたタイミングで前世の記憶を思いだし、同時にこの世界のとある違いにも気づいた。



 この世界は元の世界とは違い、男と女の立場が入れ替わっている世界だった。それに加えて比率も女性が7割で男性が3割というとんでもないことになっていた。

 そしてもう1つ。男女の立場が入れ替わっているからなのかは分からないが、男女の貞操観念も逆転してしまっている。そんな世界に産まれておいて元女子校へ純粋に家から近いからという理由で通おうなんてハッキリ言ってどうかしてる。



 これは男女の立場が完全に逆転した世界で共学になったはずの元女子校で唯一の男子生徒兼マネージャーとして日々奮闘するだけの青春物語である。

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