六畳一間
海星
第1話 海の見えるコテージ
波音が聞こえるベランダに出て、
ビーチパラソルの下でうたた寝していると、
僕の上に1人の女性が座った。
「…お呼びじゃなかった?」
「呼んだ。」
その人は僕を見下ろして微笑む…。
「…咲さん」
「ん?なに?…」
「咲はさ、デッカイ家がいい?立派な家がいい?」
「あんたと居れるならどんなとこでもそこが『我が家』。」
「じゃあさ、商店街から歩いて5分圏内のアパートでも?六畳一間でお布団敷いたらなんも置けないような場所。」
「前にもあったでしょ?あたしは別にあれでよかった。あんたと2人。『生きてる』って感じた。」
――――――二人の間に潮風がスーッと吹き抜けていく。
「…咲の作る飯が好き。」
「そうね。あんたはね。。」
「なんも言わなくても魔法みたいに伝わってる。」
「あたし、魔法使えるの。」
月夜に照らされながら彼女が人差し指を回して微笑む。
「…ねぇ咲さん。」
「…いいよ?ここでも。あんたがあたしだけ見てられるならあたしはここでもいい。どこでもいい。」
「……あのね。」
「ん?」
僕は、、、起き上がって彼女を隣に座らせて…包み込んだ…。
「なんとなくわかってるけど。でも聞きたい。あんたの言葉でちゃんと聞かせて欲しい。」
彼女は僕の腕の中でそうはっきりと言った。
僕は、こういう意見のはっきりしてる、気持ちのはっきりしてる彼女が好き。
――――――「あのね、俺ね…」
「うん。」
僕は震えていた…。
咲はそんな僕の背中をさすってくれていた。
「…咲さん、俺ね。」
「うん。」
彼女はずっと僕の言葉を待ってくれていた。
「…俺ね、咲さんがいい。」
「…それで?」
「……」
僕の本当に伝えたいところを彼女は分かっていてその上でさらに聞いてきた。
僕は彼女の目を見つめたまま唇を重ねようとすると、手で口を塞がれた。
「ダメ。聞かせて。」
彼女の言葉は強かった。意思がはっきりしていた。
「……」
「わかってるよ?結局あたしなんでしょ?」
「……。」
僕は静かにうなづいた。
「侑海、あんたはあたしの宝物。」
「咲さんも俺の宝物。…色んな瞬間で咲さんが出てくる。咲さんにいて欲しくなる。。」
「会いたくなる?」
「……。」
また僕は静かにうなづいた。
「あたしはね?…こうやって弱くて寂しがりであたしが居ないと生きていけないって直ぐに泣いちゃうようなあんたが好き。」
「……。」
「おいで。…あたしはあんたが可愛いの。」
―――――――――――― 。
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