第11話 女剣士の実力
「そろいもそろってふざけたことしやがって!」
仲間の二人が倒れたことで残ったホスト風の男が逆上して叫んだ。何か目がヤバい。
とは言えこのスタンボルトのおかげで仲間の二人をやっつけることが出来た。
この調子でいけば残ったこいつも倒せるかもしれない。
「喰らえ!」
俺は残った金髪の男めがけて引き金を引いた。射出されたボルトが一直線に飛んでいく。
この距離なら避けられない。そう思ったのだが。
「パリィ!」
叫ぶと同時に男が剣を振った。俺の撃ったボルトは男の剣で弾き返されてしまう。
「まさか、弾くなんて」
「冒険者舐めるなよ! 【剣士】のジョブ持ちなんだよ俺は。油断さえしてなきゃこんなもの屁でもねぇ!」
そう言って腕をまくる男。右腕に腕輪が見えた。輝石が嵌め込まれた腕輪だ。きっとあれがジョブストーンなのだろう。
「こうなったら二人まとめてやってやるからな! スキル【切れ味抜群】! 更にスキル【強化剣術】!」
するとホスト風の男が声を上げかとおもえば一瞬体が淡く光った。
さっきのパリィもそうだがこれがジョブを得ることで扱えるというスキルなのだろう。
だけどまずい。俺のスタンボルトが通じない以上これ以上俺に出来ることは――
「覚悟しやがれ!」
「あなたには無理ね――」
悩む俺の前に少女が立ち直に言い放った。問答無用とばかりにホスト風の男が斬りかかるが、キンッという高音が響いた瞬間、男が上空に飛ばされ回転しながら落下してきた。
これは――次元が違いすぎる。攻撃した瞬間すら俺には見えなかったぞ。流石に女の子相手に放っておけないと俺も加勢したがこれだけの腕前なら余計なお世話だったかもしれない。
「ば、馬鹿なお前なにも、の――」
「別に――ただのC級冒険者だ」
「C、C級だって! 馬鹿などう見てもそんな年には、いや待てよ――まさか! わずか一年でC級まで上がったというあの疾風のグベッ!」
何か言いかけた金髪の男目掛けて少女が動いた。おそらく刀を抜いたのだろう。金髪の男は既に意識が刈り取られていた。速すぎていつ抜いたのがまったくわからない。
「――安心しろ峰打ちだ」
少女がそう呟いた。金髪の男は白目を剥いて完全に気絶しているが、死んではいない。まぁいくら悪党とはいえ命までは奪えないんだろうな。
「……貴方たち怪我はない?」
三人の冒険者の意識がなくなったのを確認し彼女がこちらに近づいてきた。俺たちの心配をしてくれているようだ。
あの三人と違って彼女はいい子なようだ。冒険者はこうでないとな。
「俺は大丈夫。モコもケガはないし助かったよ本当にありがとう」
「ワウ!」
俺がお礼を伝えるとモコも手を上げて元気よく答えた。すると彼女がモコの前で屈み頭を撫でた。
「モコというのね。本当に大丈夫?」
「ワウ♪」
モコを優しく撫でてくれた少女。表情も少し和らいだ気がする。モコも気持ち良さげだ。
「――さっきの、貴方の戦いも見事だったと思う。私の名は
すると彼女が俺の戦いぶりを評してくれたと同時に名前を明かしてくれた。そのうえで素性を問われる。しかしこれには返答に困る。
「えっと、まぁ活動はあまりしてないんだけど」
「そう――別に珍しくないから問題ない。ただ、この連中を捕まえるためにギルドに連絡する必要がある。これから呼ぶけど時間、あ――」
「ごめんなさいーーーーどうしても急がないといけない用事があるので! 助けてくれて本当にありがとうーーーーーー!」
「ワウ?」
俺はすぐさまモコを抱えるようにしてダッシュで彼女から離れた。後処理を任せてしまうようで申し訳ないけど、ギルドに来られるのは不味い。何せ本当は冒険者登録なんてしていない。
そもそもジョブストーンだって持っていないんだ。その状況でモコを見られると色々と面倒なことになるし、ギルドに連れて行かれないとも限らない。
助けてもらっておいて本当にすまないと思っている。でもこればかりは仕方がなかった。可能ならまた出会えることがあったら、今度はちゃんとした形でお礼をいわないとなぁ。
「とににかく残りの買い物を済ませてから戻るとするか」
「ワウ」
そして俺は途中でスーパーによりつつモコと一緒にダンジョンに戻った。トラブルこそあったが午後一ぐらいで戻ることが出来たな――
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