第9話 帰りに絡まれた

 ホームセンターで買い物を済ませた帰り、突然見知らぬ男たちに呼び止められたかと思えばお金を要求された。正直意味がわからない。


「あのさ、初対面でお金を要求するなんておかしいよな?」

「別におかしくねぇだろうが。お前、そんな弱そうなモンスターしかテイム出来てないってことは新入りのG級あたりだろう? 俺らはE級冒険者だ」


 スキンヘッドの男が随分と偉そうに答えた。なるほど。俺もあえて否定はしてないが、どうやらこっちが冒険者だと完全に思い込んでいるようだ。


 しかも新入りだから先輩冒険者に金を支払えと。うん、やっぱり意味がわからない。


「別に俺からお前たちに何かしたわけでもないのになんでお金を払わないといけないんだ?」

「はぁ、どうやら口の利き方もなってないみたいだなぁ。いいか良く聞け、冒険者っていうのは一人じゃやっていけねぇ。助け合いってのが必要なんだよ」


 小柄な男が偉そうに言ってきたが、だとしていきなり金を要求してくるのが助け合いになるとは全く思えない。


「そうですか。ですが現状こっちはそういうの困ってないので結構です。いこうモコ」

「ワウ――」


 なんだこの連中? といった顔を見せているモコを連れて再びその場から立ち去ろうとしたが金髪のホストっぽい男が回り込んで来た。


 後ろにはスキンヘッドとモヒカンがいる。そんな気はしたが大人しく帰してくれるつもりはないようだ。


「たく。素直に金を置いてけば手荒な前はしなかったってのに」


 そういうと金髪は腰の巾着に手を突っ込み中から剣を一本取り出した。


 この見た目と格好にしては似合わない代物だと思ったが、どうやら特殊な袋だったようだな。


 ダンジョンでは見た目以上に収納が出来る特殊な道具が手に入ることもあると聞いたことがあるが、これがそれってことか。


 それにしても剣を取り出すとは流石に洒落にならない。


「あ~あ。リーダー怒らせちゃったよ。ま、仕方ねぇか」

「こっちもそれ相応の手に出ないとな」


 ズシンっと重苦しい音が後ろから聞こえた。斜に構え様子を見るとスキンヘッドはいつの間にか鉄槌を手にしていた。


 モヒカンは両手にナイフだ。そんなのどこから取り出したのかと思ったが、もしかしたらこいつらも金髪のような道具を持っていたのかもしれない。


 それにしてもこいつらマジか? 冒険者がこんなところで武器を抜くなんて――確かにジョブストーンが見つかったことで特殊な力を持った奴らが増えた。


 だがそれが結果的に犯罪に結びつくことも少なくない。しかしダンジョンはすでに世界中に浸透している。ダンジョンから手に入るお宝も国にとって重要な資源になっている。


 だから冒険者に対してそこまで締め付けを厳しく出来ないのも現状だ。


 とは言え流石にこれは洒落にならない。警察を呼ぶべきか。


「ワウ! ワンワン!」

「あん? なんだやるのかチビ犬風情が!」


 するとモコが連中に向けて勇ましく吠えてくれた。だがその直後スキンヘッドが鉄槌を振り下ろし地面が大きく凹んだ。


「クゥ~ン……」

「モコ。危ないから俺の後ろに隠れていろ」


 スキンヘッドの威嚇にモコは耳を畳んでか細い声を上げていた。俺は思わず肩を抱きモコを下がらせた。


「ハハハッ。お前テイムしたモンスターを戦わせないつもりかよ。そいつ一体何のためにいるんだ?」

「全くだぜ。そんなんで俺らとどう戦うつもりだ?」


 そんなことを口にして三人が俺たちを嘲笑してきたが、そもそも戦うつもりなんてこっちにはない。


 だがそんな事を言ったところでやめるつもりもないだろう。


「大人しく金を払ったほうが怪我をしないで済むぞ」

「そいつの言うとおりだ。今ならまだ金を払えば見逃してやるよ。ま、一度歯向かったから三倍は請求するけどな」


 こいつらこっちが黙っていればふざけたこと言いやがって。こんなの追い剥ぎとかわらないじゃないか。


 正直なにかあったときのために買っておいた物はある。だけどリュックの中だ。正直迂闊だったなと思っている。


 まさか買い物帰りにこんな連中とエンカウントするとは思ってもいなかったからな。


 そしてこいつらがリュックから物を取り出すのを大人しく見てるとも思えない。


 もうこうなったらとりあえず金を出すか? いや、そんなことをしたらコイツらは間違いなく調子に乗る。今回で終わりとならず今後も金を要求してくるかもしれない。


 だったらどうする。こうなったらなんとか隙を見つけて――


「お前たち一体何をしている?」


 俺が考えを巡らせていると、上から声が聞こえてきた――て、上?


 疑問に思った直後何かが空から降ってきた。長い黒髪、そして和服を身にまとった誰かだった。声からして女の子のようだが、上って一体どこから飛んできたのやら――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る