バベルの方舟 〜前文明の生き残りはほぼ異世界な星を生きる〜

Jack4l&芋ケンプ

プロローグ


俺の年齢が20000歳以上だと言ったら、信じるだろうか?


俺が先史文明の唯一の生き残りだと言ったら、信じるだろうか?


人類は滅んだと言ったら、信じるだろうか?


…まぁつまり、それらは事実だ。およそ20000年前のことだ。と言っても、俺からしたら数ヶ月前だが——人類は地球を離れ、第二の地球を目指して宇宙へと旅立った。


その第二の地球と言うのが、ここアルカテラ。


人類の宇宙への進出を可能にしたのが『魔石』という鉱石で、まぁとにかく凄い便利なエネルギーを秘めている物質だと思ってくれればいい。


俺が行くころには既に入植が始まっており、この大地に文明が築かれていた。だから何事もなく新たな生活が始まると思っていた。


…結果から言おう。俺の乗っていた大型宇宙艦が墜落した。運が良いのか悪いのか、俺だけが脱出ポッドで生き残ることができた。…コールドスリープという形ではあるが…


それで、二万年間寝てたとさ。起きてみたらビックリ——なんか新人類が誕生していた。


ケモミミが生えてるやつらとか、悪魔みたいな角が生えてるやつ、あとは天使の光輪があるやつまで…流石に度肝を抜いた。


しかも魔石を使って魔術なるものを習得している始末…だから本当は魔石という名前ではなかったのだが——とにかく彼らはそう呼んでいた。


確かにこの物質が発生させる奇妙な現象は知られていたが、まさかそれを魔術などとたいそうなものに昇華させるとは思わなかった。これじゃまるで異世界ファンタジーだ。俺からすれば転生どころか死んですらいないのに…


…これからどうしようか?もう地球には戻れないだろう。


《午前9時25分。本日も晴天です、マスター》


幸い支援システムは生きている。今はこのAIだけが俺の知り合いだった——




————————————————————


世界観情報



『魔石』:魔力を内包し、最も普遍的に存在する物質である。人類の文明は魔石に大きく依存しており、この物質が無ければ我々は未だに農耕と狩猟の文明から抜け出せないでいたかもしれない。


性質:未だ未解明な点が多いが、分かっていることのみ記述する。


魔石には様々な状態が存在する。


『不活性状態』:最も安定した状態。この状態では、特筆すべき性質は無く、装飾品や武器に使用される。魔力を秘めているが、取り出すのは難しい。外見としては、結晶質で黒ずんでいる。


『一次活性状態』:やや不安定な状態。魔力を放出している。この状態の魔石を用いることで人類は今日の文明を築き上げた。魔術においても、体内の不活性魔石をこの状態にすることで魔力を得ている。外見はやや紫色の光を帯びている。


『二次活性状態』:極めて不安定な状態。多量の魔力を放出すると共に、周囲の物質を侵蝕し、同化する。それは人体においても例外ではなく、体内の魔石がこの状態に陥るといわゆる『魔石病』となり、体内組織が魔石と同化、最終的に死に至る。


『魔石塵状態』:二次活性を終えた魔石はこの状態もしくは不活性状態へと変化する。粒子となって空気中を漂い、多くが雲に同化する。この状態の魔石を呼吸によって肺に取り入れてしまうと、肺が魔石病に侵され、その他の罹患経路(傷口からの侵入、体内での二次活性等)に比べて迅速に病状が進行する。

非人道的であるが故に、この状態の魔石を用いた兵器の開発及び使用は禁止されている。



———この大地を蝕む病でありながら、我々はそれに頼らざるを得ない。もしかすると、何万年も先の未来ではこの鉱石が大地の全てを呑み込んでいるのかもしれない。だとすると、我々の苦悩や不幸、災難などといったものはなんと矮小なものであろうか。


『大地に巣食う病』ロゴス著 より










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