「この波乱に喝采を! ~運命をぶっ壊せ〜」
runa
プロローグ
ここは、かつて人々が「異世界」と呼んだ場所。
薄明の光が、レンガ造りの街並みを優しく照らし出している。エリス教とアクセルの町、それぞれの朝は平穏に始まる……はずだった。
「カズマさーん! 起きてくださーい! 今日も新しいクエストを受ける日ですよ!」
元気いっぱいな声が、まだ眠りにつこうとしていた佐藤和真――通称カズマの耳元で響く。ベッドの上でうつ伏せになっていたカズマは、顔を枕に埋めたまま、小さな声で返事をする。
「……アクア、まだ朝早いだろ。せめてあと30分……」
「ええー、そんなこと言ってるから、いつも駄目なんですよ! さあ、さっさと起きてください! 冒険者は朝から働くのが大事なんですから!」
騒がしい青髪の女神――アクアが、カズマの腕を引っ張り、無理やりベッドから起こそうとする。彼女は、いつも以上に元気だ。そして、何かを期待しているような様子もある。
「……もう少し静かにしてくれよ。お前のせいで昨日の飲み代、かなり吹っ飛んだんだぞ」
カズマは不機嫌そうに顔をしかめるが、それを気にも留めないアクアは明るい笑顔を浮かべる。
「それは仕方ないじゃないですかー! だって、冒険者ギルドでの勝利の宴だったんですから。あれぐらいは楽しんで当然ですよ!」
――この平和な日常。いつものように繰り返される朝。それが、突然の一言で終わりを告げることになるとは、誰も予想していなかった。
ギルドの扉が勢いよく開かれ、一人の冒険者が駆け込んできた。顔色は青ざめ、明らかに何か良くないことが起きたことを物語っている。
「おい、誰か! 大変だ、町の外で……」
その言葉を聞いた瞬間、カズマは目を見開く。こういった事件は、いつもトラブルの前兆だ。そして、トラブルと言えば、自分たちのパーティに何かしら関わることが多い。
「また何か問題が起きたのか……?」
カズマはため息をつきつつも、アクアと共にギルドへ向かう。そして、ギルドの中は緊張感で満ちていた。ギルドマスターの厳しい顔、そして集まった冒険者たちの不安げな視線。
「どうやら、魔王軍の幹部がこの辺りに現れたらしい。これまでの情報によれば、前代未聞の危険な存在だとか……」
ギルドマスターが説明を終えたその瞬間、カズマは心の中で叫んだ。
――また魔王軍かよ! 平穏な日々はどこにいったんだ!?
彼は、いつものように簡単にはいかない運命を予感しつつも、仲間たちと共にこの新たな脅威に立ち向かう決意を固めた……。
そして、この瞬間から、彼らの日常は再び大きく揺れ動き始める。
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