エンデー・ナハト 第一部 夜明けと共に去らん
高槻とうふ
序章 英霊譚 第十二節の端切れ(剣鬼の■■■)
ーー端切れ1ーー
剣帝は自身と三日三晩、剣を打ち合った男に剣鬼の称号を与えた。
それは習わしであった。
剣鬼は、剣が全てであった。
故に剣鬼は力を求めて、戦に明け暮れた。血で血を洗うその様は、正に鬼であった。
ーー端切れ2(文献、破損個所とみられる)ーー
欲深き剣鬼はついに、魔女の死肉を貪った。さらなる力を得んために。遺体の傍らで、魔女の娘達が泣いている。魔女は子を守って死んだのだ。
そして剣鬼は呪われた。それは魔女の呪いだった。
ーー端切れ3ーー
みるみる弱っていく剣鬼を見て、みな彼を蔑んだ。
そして、終には剣を持つことさえ叶わぬくなった時、三人の女が剣鬼の前に姿を現した。それは、自身が屠った魔女の娘達だった。
剣鬼は泣いて許しを乞うた。
剣鬼の最後をみな嗤った。
※切れ端は、合計で3枚。それぞれの紙の筆跡が異なる。
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【はじめに】
剣鬼が登場する民話は、その内容の細部に違いが見られるものの、いまだに多くの国々で語り継がれている。その多くは子供の教育に利用され、「いじめっ子は剣鬼になるぞ」や「魔女の子孫に祟られる」といった負の印象を与える伝承の一つとして残っている。
【民話の多様性と共通点】
剣鬼を題材にした民話は、地域によって細部に違いが見られるが、一貫して力に溺れた者の末路が描かれていることが確認できる。
【学説の紹介】
剣鬼の民話に関して、有力ではないが根強い一つの学説が存在する。それは、民話の中の剣鬼が物語の前半と後半で全く別の人物を描いているという説である。決定的な証拠は未だ見つかっていないが、この説が一種の浪漫的な説として支持される理由を以下に述べる。
【文献の断簡とその影響】
第一に、この民話の元となった文献が断簡であることが挙げられる。専門家によれば、現存する文献は物語全体の約35%に過ぎない。現段階では他の英雄譚の一節よりも明らかに短い内容となっている。
【他の英雄譚との比較】
第二に、他の英雄譚に登場する剣鬼らしき人物像と、当該民話の剣鬼の人物像が大きく異なる点がある。
また、剣鬼を「アレテソル」として祀る地方も存在する(アレテソルは古典言語で”徳のある魂”)
しかしながら、これも確証的とは言い難い。なぜならば、他の英雄譚では明確な主語として「剣鬼」が登場することはなく、「剣鬼」と思われる存在を暗示的に描かれているに過ぎず、明瞭さに欠けるためである。
【結論】
歴史に「諸説」は付き物であり、剣鬼民話には浪漫的な魅力があることは確かである。歴史的な事象や人物に関する解釈は、時代や文化、研究者の視点によって異なることが多く、剣鬼の民話も例外ではない。今後も新たな文献の発見や既存の資料の再解釈を通じて、剣鬼の物語に関する理解が深まることを期待したい。
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