波上の落日
第2話
「外に出てな」
家に客が来ると、母親はいつも決まってそう言った。
「呼ぶまで中に入るんじゃないよ」
幼いマウロには、母親の行動が何を意味するのか分からなかった。客は同じ人だったり、違う人だったりしたし、一日に何人か来ることもあれば、何日か日が空くこともあった。
ギシギシと鳴る音と、何かに堪えかねた声とが裏庭に出たマウロにも聞こえてくる。冷たい風にぶるっと身を震わせて、海の方を見やる。
防波壁のすぐ向こうでは金色に揺れる波頭が、まるでおいでおいでをするようにチカチカと輝いていた。
──きれいだなあ。
夕陽と海の織りなす絶景に、わけも知らず涙がこぼれ落ちる。マウロにはこの美しさがはかなく見えてしょうがなかった。
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