scene.3

第15話

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次の週の金曜日の朝



「今日の歓迎会はいつもの店でやりまーす」



田中くんの元気な声が課内に響く




そういえば、今日歓迎会やるって言ってたっけ




五十嵐が来てから10日……



相変わらず私の前では生意気だから、ほとんど会話していない



営業の仕事が分かるなら他の課に行けば良かったのに



でも、嫌でも一緒に行動するしかない




「五十嵐、行くよ」



今日も一緒に取引先に向かう




本当ストレスだ……



そう思ってエレベーターに乗ると、



涼真が一人で乗っていた




「お疲れ様です」



五十嵐が挨拶すると、



「おう、お疲れ」



少し偉そうに返事をする




会いたくなかったな……



田中くんの話を思い出す



結局まだ話が出来ていない



現実から目を背けて連絡も無視していた




「憂佳、何で連絡してくれない?」



えっ?今、憂佳って呼んだ?



私の気持ちも知らないで話しかけてくる涼真



会社で下の名前で呼ぶなんて初めてだ



五十嵐もいるのに何考えてるの……



付き合ってるの勘付かれたら困るじゃん




「いろいろ忙しいから」



私が素っ気なく返事をすると、



「指導担当になったから?」



嫌味っぽく言ってくる




何?私に嫉妬してるわけ?



涼真が浮気してるかもしれないからじゃん



苛立つ気持ちを抑えていると、ちょうど1階に着いた



「また連絡するから」



そう言って先にエレベーターを出る



はっきり言えない私も悪い



でも、向き合うのが怖い

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