第11話

会社を出て駅まで歩く



私から何か話さなきゃな……




「五十嵐くん、これからよろしくね」



斜め後ろを振り返りながら五十嵐くんに話しかける



冷たい目……さっきとは全然違う




「俺、女嫌いなんですよね」



……え?



私は五十嵐くんの言葉に耳を疑う



さっきまでは猫を被っていたの?




「指導担当が女とかマジで嫌です」



「まあ、仕事なんで仕方ないですけど」



すごく嫌な顔をして私を見ている



普通上司にそんなこと言う?



信じられない……ゆとりモンスターなの?



私もそんなことを言われて黙っていられない




「私だってなりたくてなった訳じゃない」



「そういう態度なら何も教えないから」



冷たく言い放つと黙り込んでしまう五十嵐くん



すぐに言い返して来るかと思ったのに……



ちょっと言い過ぎたかな?



でも、仕方ないよね……




そんな心配もつかの間で、



「別に教えてほしいとか思ってませんよ?」



「俺、営業やっていたんで研修期間なんて形だけですよね」



やっぱり憎たらしく返してくる



何でこんなに生意気なの……




「あと、くん付けとか気持ち悪いんでやめて下さい」



本当失礼な発言



完全になめられてるよね……



呼び捨てとか偉そうだから遠慮してくん付けしてるのに



こんなヤツ、くん付けする価値もないわ



自分がイケメンだからって調子乗ってる……




「わかった」



私は素っ気なく返事をして、それからは一言も喋らなかった



本当なら怒った方が良いのかもしれない



でも呆れて怒る気も起こらない



研修期間だけだし我慢しよう……

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