第32話

飲み物を買って戻るとすぐに電車が来た



「そういえば、お兄ちゃんがさ……」



私はわざと話を紛らわすように違う話を始めた



でも、翔汰の返事はそっけない




結局あまり話さないまま駅に着いてまた歩き出す



私は翔汰が好き



やっぱりこの気持ちは変えられない



だけど、口には出せないし報われることもない



でも、だからって大地と付き合うの?



私の頭は相変わらず告白のことでいっぱいだった




「もう家着くよ」



気付くと家のすぐ近くまで来ていた




「あ……ごめん」



私は慌てて翔汰の手を離す



当たり前のように繋いだままだった




「もう暗いから繋ぐ必要ないのにね……」



すると、翔汰はいきなり私の手を引いて家と違う方向に歩き出した



「ちょっと……翔汰?」



黙ったまま何も言わない翔汰



仕方なくついていくと近くの公園に着いた



よく二人で遊んだ公園



懐かしいな……




「ちょっと座って」



私は言われるがままにベンチに座る



なんだか翔汰の様子がおかしい




「あの先輩と付き合うな」



「………え?」



私は耳を疑った



翔汰はいつもと違って真剣な顔をしている




「なんでそんなこと言うの?」



私は一瞬でも期待した



翔汰が嫉妬してくれたんじゃないかって



でも、そんな期待はすぐに壊された




「嘘でも俺と付き合ってるんだから他の男と付き合ってほしくない」



「何それ……」



嘘でもって……嘘だし



本当の彼氏でもない翔汰になんで縛られなきゃいけないんだろう



本当自分勝手すぎる




「翔汰のお遊びに付き合ってられない」



私が怒って立ち上がろうとすると、



「遊びじゃない」



「えれなに彼氏が出来たら嫌だ」



そう言って俯く翔汰



それってどういう意味………



もしかして……意識してくれてる?




私が戸惑っていると、



「ごめん、幼なじみにそこまで言う権利ないよな」



「先輩と付き合いたかったら付き合えよ、そしたら止めてやるから」



翔汰は私の頭を撫でながら笑って言った




やっぱりそうなるよね



でも、彼氏が出来たら嫌だって言ったことは否定しないんだ……



別に好きじゃなくても幼なじみに恋人が出来るって嫌なのかな



どうせ悔しいとかくだらない理由だろう



裏切られるだけだからもう期待はしない




「………ゆっくり考える」



私達は公園を出て家へ帰った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る