第22話

ドキドキ………



昔とは違って、大きくなった翔汰の手



手を繋いでいるだけなのにこんなに緊張するなんて




この時間には珍しくスーツ姿の新入社員みたいな人達で車内が混んでいる



ドアの近くの隅に追いやられて翔汰との距離が近い



背が伸びて本当に大人っぽくなったな……




そう思って翔汰の顔を見上げると、こっちを見つめている



ドキッ………



目が合って恥ずかしくて顔が熱くなる



近すぎて緊張しているのがバレてしまいそう




「えれな、顔赤いよ?」



翔汰はわざと耳元でささやいてきた



「バカ……そんなことないし」



私は必死にドキドキを抑えていると、



「速水くん、おはよう」



近くの席に座っていた同じ高校の女の子が翔汰に話しかけてきた




小さくて可愛い子……



翔汰と同じクラスなのかな




「あ、おはよう」



翔汰は笑顔で挨拶をする



全く昔から愛想が良いんだから……



そんな顔したら女の子は勘違いするよ




「……もしかして、彼女?」



女の子は私に気付いて驚いたような顔で言う




「うん、そうだよ」



翔汰は当たり前のように堂々と答える




「みんな速水くんは彼女いないって言ってたけど……」



すると、翔汰が繋いでいる手を恋人繋ぎに変えてきた



その手を上げてその子に見せ付ける



私はとっさに手を離そうとしてしまうけど、翔汰が力を入れて離さない



「じゃあ、彼女いるって広めておいてくれない?」



「……わかった」



「ちなみに彼女、2年だから」



「………先輩だったんですね、すみません」



その子は私を見てバツが悪そうにしている



がっかりしているのが見え見えだ



やっぱり翔汰はモテるんだな……




「フリなんてしてて本当に良いの?モテるのにもったいなくない?」



最寄り駅に着いて歩いている途中で聞いてみる



本当は他に彼女が出来るなんて嫌なくせに




「俺、涼介さんと一緒で部活に集中したいし」



「女ってみんなわがままだから付き合うとかめんどくさい」



まるで何人とも付き合ってきたような言い方



中学でどれだけ付き合ったんだろう



聞きたいけど聞けない……



私はまた胸が痛くなるのを抑えた

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