第50話

…私はまぼろしを見ているのだろうか、

それとも、全て夢でしたって落ち?



「…もう1度言ってください」


信じられないんだからしょうがない。

失礼は重々承知なのだ。


「…辞めたいなら結婚しろと言った、

それが嫌なら辞める事は許さない」


「…」


嘘だよね…やっぱり…

っていうかそれって一種の脅迫じゃないの?

会社の契約書探してきて、社長に突きつけようかな…、


「…じ、冗談辞めてくださいよ…」


はは、と笑う私と対照的に彼は笑っていない。


大真面目…らしい。


「…」


「本気ですか…?」


「ああ」


人生で一番のイベントかもしれないプロポーズが脅迫紛いなものだなんて信じたくない…。


普通のサラリーマンでよかったのに!

年収だってそんなに高くなくていいし、顔だって優しければ、イケメンじゃなくたって良かった。


私の人生設計は崩れたも同然かもしれない。

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