第28話

「せんぱーい?」


櫻井さんの声でハっとした私は、

昔の事を思い出して、胸が痛くなっていた。


「…ごめん、そろそろ戻るね、

櫻井さんはちゃんと休憩してから戻ってきてね」


「は〜い」


そう彼女に告げて、休憩室を出た。

4年前の事なんか思い出すなんて…


馬鹿馬鹿しいよ、ほんと。


あの時は私は子供だったんだ、幼稚で何にもわかってなかった。


…ドンっと音がして、私は誰かにぶつかったのがわかった。


「…すみません…って奥田部長…」


目の前には、奥田部長が困った顔をして私を見ていた。


「天宮、どうした?らしくないな、

風邪でも引いてんの?」


私の顔を覗き込む部長に、

少し、キュンとしてしまう。


だからあなたはモテるんですよ…、


「大丈夫です、すみません、

余所見しちゃって…」


「そ?なんか悩みでもある顔だけど?」


…ありますよ、大ありです。


「…ないですよ!

ご心配ありがとうござい…きゃあっ!」


急に後ろ側から腕を掴まれ、私はそちらの方へバランスを崩しそうになった。


…えっ、誰…?


「天宮」


そちらに目を向けると、私の腕を掴む社長がいた。


え…何でここにいるんですか?

私はなんで腕を掴まれているんでしょう?

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