第16話

「奈那っ!」


トンっと肩を叩かれ、声のした方を見ると、

案の定、私の予想していた人がいた。



高杉たかすぎ 佳菜美かなみ 25歳



私と同期の人事部所属の佳菜美が私を憐れみの目で見ていた。


「佳菜美…おつかれ」


「あんたは今日も幸が薄いね〜 」


うるさいななんて言う気力もなく、

黙って佳菜美を見つめるしかなかった。


佳菜美は黒髪をバレッタで一つに纏め、

淡いピンク色の口紅を塗っている所謂、可愛い系。


人事部で、面接担当や教育担当を任せられている彼女は人を見る目がある。


「これ、食べる?」


「…ははーん、また社長にいらないって言われたんだ〜、そっか、今日は本社から呼び出しくらったんだな」


佳菜美には色々話している為、

事情はよく知っているのだ。


クロワッサンたい焼きを受け取った彼女は、一口食べて、美味しいのにね、と私に同情してくれた。


同情するなら、代わってくれ…

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