天職

第1話

私にとって、今の仕事は天職だと思っている。

但し、あの男が上司で…いや社長ではなければの話。



天宮あまみや 奈那なな 25歳。


アラサーに一歩足を踏み入れているそこらへんにいる会社員…だと思う。


あの男が社長でなければの話だけど。


しつこいようだが、私にとって彼は、

悪魔…というか、大魔王というか…、とにかく、"魔"をつけたくなるほどの存在で…。


「天宮〜、顔死んでるけど」


「は!?」


同期の塚本つかもと誠司せいじのちょっかいにさえ、顔を顰めてしまうほど今の私は気が立っていた。


「…顔怖いぞ」


「うるさいっ!、私は忙しいの!」


忙しいと言いながら、この休憩室にいるのは矛盾しているとわかっている。

今日は朝から動きっぱなしだから5分だけ休ませて…と休憩室に入ったら、塚本くんがいたのだ。


私は塚本くんのお気楽そうな表情を一瞥しながら、先程あの男にいらないと返却された某カフェのコーヒーを一気飲みした。

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