第37話

「君のお父さんって、とても運が良い人らしいね。」


「運が…?」


そうだね。

気にしたことはなかったけれど、言われてみればそうかもしれない。

とても一流とは言えない大学を出たのに、今は一流と呼ばれる会社に勤めてるし…

マイホームも、本当は同僚の人が買ったところだったのに、入居前に海外赴任が決まったおかげで、そこをお父さんが破格の値段で買うことになって…

福引や懸賞にも出せばたいてい何か当たってる。

宝くじ買ったら?って言ったら、当たったら怖いから買わないなんて言ってるくらいだもんね。




それに、お母さんも運が良いんだよね。

場所があんまり良くないからって、今のパン屋さんをこれまた破格のお値段で手に入れて…

それからすぐに、そこにはマンションが何棟も建って、すぐそばにバス停も出来て…

だから、お母さんのパン屋さんはとても繁盛してる。

もっと店を大きくしたらって言っても、妹の紗香とふたりでやっていきたいから、大きくする気はないって。

お父さんもお母さんも、ふたりとも、本当に欲がないんだよね。




「うちの父は良く言うんだ。

運も実力のうちって。

多分、そういうところでも君のお父さんのことを良いなって思ったのかもしれないな。」


なるほどね。

そうじゃなきゃ、課長の娘とお見合いなんてさせないよね。

もっと良い条件のお相手もいっぱいあったはずだもん。

あ、でも、このお見合いは訳ありだし…

だからこそ、ランクを下げたって考え方もあるけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る