第32話

「あの…嫌われてるっていうのは…」


「え?うん、そのまんまだけどね。

僕が生まれた頃、兄さんたちはすでに実家にはいなかったんだけど、母が後妻に入ってからは、お正月にも家には来なくなった。

まぁ、ごくたまぁ~に、法事とかで顔を合わせるくらいだったね。

年も離れてるし、僕は、まともに話したことさえなかったし、正直言って、兄弟って言う実感もないんだ。

あ、でも、恨んでるとかそういう気持ちもないんだよ。

だって、ほとんど年が変わらない女性が母親になるなんて、そりゃあ、誰だっていやだよね。

その気持ちは僕もわかるから。

でも、両親にとってはやっぱり悲しい話だし、それで、うちではいつしか兄さんたちの話はタブーになったんだ。

言っておかなくてごめんね。」


「い、いえ、そんな……」


そういえば、結婚式の時も、いつの間にかいなくなってたよね。

結婚前にも、仕事が忙しいからって、会わせてもらえなかったし。

そっか…こういう事情があったんだね。

柊司さんには、けっこう根深い家庭環境があったんだ。

これからは気を付けなきゃ。

でも、我が家にはこういう悩みはまったくないから、なんだかちょっと不思議な気分。

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