第6話

「ちょっと待ってろよ。」


そう言って、お父さんは席を離れて…




「これが、沢渡柊司君だ。」


戻って来たお父さんから手渡された一枚の写真…

仕事場らしき所で微笑むその人は、小洒落たスーツを着て、穏やかに微笑んでいる。




それを見た私の鼓動は、急に早鐘を打ち出した。




う、嘘だ!?

こんな素敵な人が、一般人にいるはずがない!

落ち着け…落ち着くんだ、芹香!




私は、コップのお茶をぐびぐびと飲み干した。

そして、もう一度、写真に目を落とす…




(……す、素敵…!)




信じられないけど、ソジュン級のイケメンだ。

今、口を開いたら、私は間違いなく言ってしまうだろう。




「この人と結婚します!」と。




しかし、落ち着け。

一般人でこのレベルのイケメンなんて、そうそういるもんじゃない。

そうだ…!これは、きっと『奇跡の一枚』なんだ。

服装や髪形のセンスは確かに良い。

でも、座ってるから、もしかしたらとんでもなく背が低いのかもしれないし、外見にもなんらかの『ワケ』があるのかもしれない。

だから、わざとこんな格好良い写真を渡したんだ。




何百枚も撮ったうちの奇跡の一枚かもしれないし、或いは、修正をかけてあるのかもしれない。

今のパソコンの修正技術を使えば、別人みたいになれるだろうし。




でも、確かに、気になる。

実物は、一体、どの程度に格好良い人なのか…

それに、いやなら断れば良いわけだし…




「お父さん、私…この人と会ってみるよ。」


私の気持ちは決まった。

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