第1話

「来た!ほら、今、出て来た人…!」


美沙は声を潜めてそう言う。

私は、何気ない振りをしながら、厨房から出て来た人をそっと見た。




「ね?すっごく格好良いでしょ?」


「……すっごく、ではないな。

不細工ではないけど、たいしたことない。」


「えー……あの人がたいしたことないなんて、あんた、どんだけ面食いなのよ!?」


美沙は、不満そうな声で私を非難する。




「……ほら。」


私はスマホの画面を、美沙の前に差し出した。

そこに映っているのは、韓流スターのキム・ソジュン。

『アジアの美神』と呼ばれる俳優だ。




「ソジュンと比べてみなさいよ。

どう?たいしたことないでしょ?」


「そ、そりゃあ、芸能人と一般人は違うわよ。

そ、それに、キム・ソジュンは、整形してるって噂もあるじゃない。」


「整形してたらどうだっていうの?

じゃあ、あの人が整形したら、ソジュンになれると思うの?

整形っていうのは、元が良くないと綺麗にはなれないの。」


「もうっ!そんなに面食いだったら、あんた、一生、結婚出来ないわよ。

キム・ソジュン級のイケメンは一般人には絶対にいないんだからね!」


「おあいにく様!私は、絶対、みんなが見惚れるようなイケメンと結婚するんだから。」


「そんなの無理、無理!

芸能人でも滅多にいないんだから。」


「無理じゃないっ!」

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