第25話




「行ってらっしゃい。」


私がそう言うと、どこかはにかんだような顔をしながら、フェルナンさんは家を出て行った。




ここに来て十日程が経った。

体の痛みはすっかり消えて、私は少しずつ家のことを手伝うようになっていた。

とはいえ、まだなかなかうまくは出来ないのだけど。




だって、ここには掃除機も洗濯機もない上に、洗剤だってないんだから。

果物の皮みたいなものや植物の灰汁を洗剤代わりに使うんだって、フェルナンさんに教えてもらった。

洗濯ものを棒で叩いたり、足で踏んだり…けっこう疲れる。

機械がないと、家事ってこんなにも大変なことだったんだね。




フェルナンさんとはうまくいっている…と、思う。

そりゃあまぁ、特別な仲ではないけれど、友達くらいには思ってもらえてるんじゃないかと思う。

フェルナンさんへの信頼は強まったけど、でも、やっぱりまだすべてを話す勇気はない。

だから、相変わらず、記憶喪失のせいにして誤魔化している。

まぁ、話したところで、信じてもらえないかもしれないけど…

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