第10話

(あれ…?)




不思議なことに、お父さんとお母さんはさっきと同じ普段着のままだった。




「あ、あの…お父さんたちは着替えないの?」


私の問いかけに、ふたりとも何も答えない。




「紗季……」


目と鼻を真っ赤にした母さんが、私に近付いて私の腕にバングルをはめた。

そして、その反対側の腕にはお父さんが同じようにバングルをはめた。




「な、何なの?これ……」


金色の土台の中央に、右のは赤い石、左のは黄色の石がおさまっている。




「まさか、こんな日がやって来るとは思わなかったけど…

これが、あなたの運命だったのよ…」


そう言って、お母さんが涙を拭う。




「運命……どういうこと?

何がどうしたのよ。」


「紗季…運命を受け入れるんだ。」


「お父さん!もっとわかるように言って!

そんなんじゃ、私、何もわからない。」


「何も心配することはない。」


お父さんの瞳もゆらゆらと揺れていた。




怖い……

なんだかわからないけど、何か大変なことが今起きようとしている。

たとえようのない不安に、私の体はぶるぶると震え始めた。

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