第9話

「ご馳走様でした。」




私はどうにか、食事を終えた。




「紗季、服を着替えなさい。」


「え?どうして?」


「良いから…小綺麗で品の良いものに着替えなさい。」


「どこか行くの?」


「早く!」




全く意味が分からない。

何か、大変なことがあったのは間違いないけど、それが何なのかはわからない。

両親の親は早くに亡くなってるし、親戚もいないって話だったから、そういうことじゃないだろうけど…

ってことは、お父さんが誰かの連帯保証人にでもなって、多額の借金を背負わされた…とか?

もしかしたら、今から夜逃げでもするんだろうか?




いろんなことを考えれば考える程、不安は大きく広がっていく。




「紗季、早くしなさい!」


「は、はいっ!」




階下からお父さんの声が響いて、私は焦って服を着替えた。




(あ……)




私は、小林さんからもらったネックレスとクッキーをコートのポケットに突っ込み、急いで階段を駆け下りた。

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