第28話 何でも屋vs12司支
政府官僚
カケルが師匠の元を訪れていた頃、政府内でも黒武者の事について議論が交わされていた。
「これ以上奴を野放しにする意味はなかろう!何者かは知らないが、この黒武者がやっている事は明らかに我々への宣戦布告に変わりない!!!」
ドンッ!と机を叩きつけ牛次は黒武者の脅威について訴えかけていた。事実、黒武者は政治内でも重要な人物を次々と殺害していっていると言う。更には日本と貿易などを行う諸外国の人物さえそのターゲットにされている。
「あやつを野放しにしたら更に被害は広がるぞ!」
「メェメェ、落ち着いてください牛次さん」
「若いものは黙っておれ!!!」
「そうやっていつも俺らを蔑ろにするから話が進まねぇんだよおっさん」
「あはっ!うける!確かにそれだわ」
「えーい貴様らは喋るな!総理!ご決断を!必要でしたらこの私が!」
皆が一斉に現内閣である宗一郎を見た。
宗一郎は目を瞑りながら少し考えた様子を見せた後、天辰に一つの命を下した。
「天辰・・・黒武者を捕えろ。それが無理なら処分しろ」
「御意」
席を立ち扉から部屋を後にした天辰はスマホを取り出し誰かに連絡をとりながら長い通路を一人歩いて行った。
ーー
現在
「ウオォぉぉぉぉぉラァァァァァ!!!」
「くっ、!?」
黒武者と天辰の二人の斬撃が飛び交う中、カケルはそれらを避け続けながら黒武者に一撃を与えた。
「どうだ!?少しは話聞く気になったか!!?」
「殺す!!」
「だぁー!何でだぁぁぁ?!」
「"龍道"」
天辰が地面に刀を突き刺した途端、地面から斬撃がまるで龍が蠢くようにひび割れながらカケルと黒武者の二人に迫った。
「邪魔すんな!」
「チッ!」
カケルは地面ごと斬撃を蹴り飛ばし消滅させ、黒武者は空中に飛び、それぞれが技を回避した。
しかし天辰もそれを読み既に空中へとその身体を浮かばせていた。
「"辰落とし"」
「しまっ!!、ぐあッ!?」
天辰の刀による振り落としをモロに喰らった黒武者はそのまま地面へと叩きつけられた。
天辰は更に追い討ちをかけるかのように空中から黒武者に向かって一直線に落ちてきた。
「終わりだ。"天龍降舞"」
「っつ、、、!」
起きあがろうとした黒武者だったが、鈍い痛みに一瞬気を取られてしまい、天辰の刀が目の前まで来ていた。
「俺を無視すんじゃねぇぇぇ!!!」
黒武者に迫り来る天辰の刀をカケルが横から天辰の身体ごと蹴り飛ばし遠くへ吹き飛ばした。
「大丈夫かハヤテ!?」
「お、前、何で、」
「全部話は師匠から聞いたんだよ。お前もうこんな事やめろ!お前の親父はお前がこんな事したって何にも誉めてなんてくれねぇよ!」
「黙れ!父さんのことを悪く言うな!」
「目覚ませ!!!お前をずっと守ってくれてたのは誰なんだよ!?親父さんか?違うよな!お前と一緒に住んでる師匠だろ?あの人に心配かけさすんじゃねーよ!!!」
「お前には、関係ない!!!」
手に握った刀でカケルを振り払い、黒武者は立ち上がった。
そして刀を納刀し抜刀の構えを取ったハヤテは俺に怒鳴り声を上げながら迫ってきた。
「お前に何が分かるんだ?話を聞いただけで分かった気になるな!」
「お前こそ師匠さんがどんだけ心配してると思ってるんだよ!!?」
「黙れぇぇぇ!!!」
首を目掛けて納刀した刀を目にも止まらぬ速さでカケルに向かって抜いた。
しかし刀はガキンッという音を立てながらカケルの歯によって止められた。
「く、こんなふざけたやり方でッ!?」
「は、はふぇふなほぉ〜」
そのまま歯で刀を受け止めている間にハヤテの鎧を砕く為に拳で殴りかかった。
「ぐわっ!?」
「がぁぁぁッ!!」
しかし俺は突然来た雷によって拳は開かれハヤテの隣に倒れ込んだ。何が起きたのか分からずハヤテの方を見てみるとハヤテもその雷によってやられ気絶していた。
「"雷龍追刃"。刃で発生させた雷を相手に向けて放つ我が奥義。暫くは痺れて動けないだろう」
刀を納刀しながら歩いてこちらに来たのは先ほど俺が遠くへと蹴り飛ばした筈の天辰だった。
「あ、あんた雷も出せるのかよ・・・」
「意識を失わせる気でいたのだが、驚いた前もそうだったが私の技を受けてここまで耐える人間はあの人以来だ」
「あっそう、だったら俺とこいつの問題に口挟まずにそのまま帰ってくれね?」
「悪いがそれは出来ない。私も総理からの命を受けて来ている」
「んじゃあ、第二ラウンドやるしかないな」
俺は気合いで痺れる身体を起こし立ち上がった。今ここでハヤテを殺される訳にはいかない。
その為にはこの男を俺一人で倒す必要がある。正直ハヤテと同時に来られるよりかはサシでやった方がまだ勝機はある。
ハヤテも恐らくこちらを殺しにくる筈だ。ならばこいつを倒してハヤテも倒す。
つまりは2タテした後にハヤテを説得すればいい。
「簡単だな」
身体中さっきの雷のせいか思うようにはまだ動かないがそうも言ってられない。
「オラ、こいよ」
「それ相応の覚悟があると言うことだな。いいだろう」
天辰はそう言うと刀を抜きもう一度構えた。
そしてカケルに向かって突きを放った。その瞬間、まるで弾丸の様な風圧がカケルを襲い、そのままその場で膝をついて血を吐いた。
「がはっ!?」
「龍裂槍。風圧のみで風穴を開ける程の威力があるのだが流石だ」
「ぐっ、そ、そりゃどうも、」
「次行くぞ、龍裂槍」
「くそっ!」
再び来た弾丸のような風圧を避け地面に向かって拳を叩きつけた。
ドガンッ!と言う大きな音と共にあたり一面に砂煙が巻き起こった。
「目眩しか。ん?」
そしてカケルはすかさずそこら辺にあった石ころを二、三度砂煙が巻き起こる場所を走りながら天辰に向かって弾丸を帰る速度で投げつけた。
天辰は煙に紛れて飛んでくる石ころ交わしながら天辰は地面に刀を刺した。
「"雷龍追刃"」
再び放たれたその雷は天辰の周りを覆う様に放たれ砂煙を一瞬で晴らした。
砂煙が晴れ視界がクリアになった事で天辰はすぐにカケルの場所を確認した。
「いない?」
しかしカケルの姿は何処にもなく完全に姿を消していた。
(上?いや)
「下か。龍振」
天辰が刀に手のひらを当てた瞬間、地面が揺れその勢いで地面が砕かれ破片が空中を舞った。
しかし地面の下にさえカケルの姿はなかった。
「何?」
「こっちだ!」
声が聞こえ後ろを振り返るとカケルの姿がすぐそこにあった。
「ッ!?」
「オラァァァァァ!」
カケルは渾身の一撃を天辰に放った。
天辰は自身が一番警戒していた筈の背後を突かれた事により一瞬、反応が遅れカケルの拳をみぞおちにモロに喰らい殴り飛ばされ、そのまま天井を突き抜けた。
「へへっ、どうだ。イッ、」
カケルは天辰を殴り飛ばした拳の肩に痛みが走ったのに気がつき目をやると刀で切り裂かれた様な跡があり、そこから血が流れていた。
「何だ、ってあんたしかいないよな!」
上を見上げたカケルは上空から自分に迫る人影に気付き上を見上げた。
カケルは斬られた肩を見て、自分を斬りつけ自身に起こるダメージを最小限にして次に繋げているのだと気がついた。
そして今上空から来ている男にとってこれが最後の一撃だと言うことも同時にカケルは確信した。
「幾ら威力を落としたって俺の渾身の一撃だ。耐えられる筈がねぇ」
カケルの予想は当たっていた。
天辰は現在も多くの犯罪者を取り締まっており現役ではあるが歳には勝てない。体力と身体の機能は年々低下している。
現役の傭兵くずれの魔術師を倒す程の力を持つカケルの拳の威力を幾ら落とした所でそのダメージは尋常ではない。
自身でもこれが最後の一撃だと理解していた。天辰は刀を握るてに力を込め自分に課せられた命とある目的の為、刀を振り落とした。
「"破辰天墜"!!!」
「オォォォラァァァァァァァァァ!!!」
カケルも天辰との勝敗をつける為、そして師匠との約束の為もう片方の腕で拳を握り天辰の刀を殴りつけた。
両者がぶつかり合い二人以外のあたり一面、全てが吹き飛ばされた。
そして土煙が晴れその大地に立っていたのは、
「ハァ…ハァ…、ゲホッ、お、俺の勝ち、だ」
カケルだった。
天辰は刀を折られその場に倒れた。
自分の勝利を確信し一息つこうとした時だったカケルは何かが近づいて来る感覚。初めはカケル自身も勘だった。カケルは自身の勘を信じ体を捻った。
そして背後から近づいて来たものである刃はカケルの脇腹を刺し貫いた。
「くっ、お、前ぇなぁ」
「ハァ…ハァ…」
それをやったのはいつの間にか意識を取り戻していたハヤテだった。
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