第25話 師匠
ハヤテ宅
「ささ、粗茶じゃが飲みなさい」
「あ、ありがとうございます・・・」
ハヤテを尾行していた私達は今尾行相手の師匠からお茶をご馳走になっていた。
「ど、どうしましょう青さん。ハヤテさんめちゃくちゃこっち並んだますよ!?」
「お、落ち着いて私達はただ昨日のこと知りたくて来ただけだから怒られるはずはないと思う多分」
「帰りたい」
「まぁまぁハヤテが友達を連れてくるのは初めてじゃからのぉ、学校での事ゆっくり聞かせてくださいな」
「師匠ッ!勝手な事しないで下さい!」
ハヤテは怒鳴り声を上げながら師匠を静止しようとしたが、時は既に遅く青がハヤテの学校の事について色々と話をしていた。
「それでいつも本ばかり読んでるんですよ」
「ほっほっほっ昔から変わらんのぉ」
「おい!さっさと帰れ!」
「えーいいじゃーんもう少しいてもさぁー」
「黙れ!迷惑だ!お前らもなにくつろいでいるんだ!?」
青が師匠と話をしている中、葵と緑の二人も部屋の机で宿題をしていた。
「帰ってやれ!」
「じゃあ昨日のこと教えて?貴方なんでしょ彼女を助けたのは」
「・・・違う」
「嘘」
二人の間に緊張感が走り緑はガクブルに怯え机に潜った。そしてハヤテが口を開こうとした次の瞬間、それを遮る形で師匠が割って入った。
「ほっほっほっ、ハヤテよその子は恐らく能力者じゃよ。そうじゃろ?」
「さぁ?」
「食えない子じゃ。ハヤテよ恐らくかのじょの前では嘘はつけん。正直に話しなさい」
「チッ、はい分かりました師匠」
舌打ちをしながらもハヤテは三人の前に座り真実を静かに語った。
「そうだ。あの時お前を助けたのは俺だ」
「やっぱり。貴方は何者なの!」
「何でお前達にそこまで、」
「わしら陰陽師じゃよ」
「「え!?」」
「・・・」
「ちょ、し、師匠!?何で行っちゃうんですか!」
「別に隠すことでもなかろう?元じゃしな」
焦るハヤテをよそに師匠はあくまで飄々としながら自分達の素性を明かした。
「陰陽師ってあの?」
「東部の全てを取り仕切ってるという?」
「そうじゃよそこ出身じゃ」
「へぇ、驚いたなぁ。つまりハヤテ君は陰陽師って事なんだ。だから私を助けてくれたんだね。ありがとうハヤテ君」
ハヤテの方を向き優しく微笑みながら青は感謝の言葉をハヤテに送った。
「・・・別にたまたまだ」
「ふふ、ハヤテ君って意外と照れ屋?」
「うるさい!早く帰れ!」
「夕食もついでにどうだね?」
「え?いいんですか?」
「ほっほ、久しぶりに賑やかじゃからのぉ。その僅かばかりの礼じゃ」
「「「ありがとうございます!」」」
「帰れよ!!!」
その日の夜、青達三人はハヤテの家で共に食卓を囲んで学校での出来事や普段の私生活の事などを話していた。
「へぇ、ハヤテ君はいつも筋トレしてるだ」
「うむ。こやつがやる事と言えば筋トレか読書くらいのものじゃよ」
「全然知りませんでした」
「・・・今日は何でやってないの?」
「お前らがいるからだよ!」
「葵ちゃんはどうなの?そういえば私達も葵ちゃんの事よく知らないや」
「別に普通、読書してる。あ、でもたまに家の人の仕事の手伝いしてる」
「お家の人は何の仕事してあるんじゃ?」
「何でも屋」
何でも屋、その言葉を発した途端、ハヤテと師匠の間に緊張感が走った。
「ど、どうかさんですか・・・?」
「ほっほっほ、いや何つい最近もその名を聞いてな少し過敏になっておっての。・・・主にハヤテがの」
「え?何かあったんですか?」
カケルが何かをやらかしていると直感した葵は厄介な事になる前に立ち去ろうと席を立った時だった。
「すんませぇん。お宅に葵って子来てます?」
「あっ・・・バカ」
ハヤテ宅に来た男は今話をしていた何でも屋本人である少年、カケルだった。
「何で来たの」
「そりゃないぜ。心配して来たのにさぁ」
「一人で帰れる」
「えーそんなこと言わないで一緒に帰ろーぜぇー」
「お前はッ!?」
「ん?」
ハヤテはまるで復讐したい相手に再会したように怒りに満ちた表情でカケルを見ていた。
「えっと、何処かで会った?」
「いや・・・何でもない」
「ほっほっほっ今日は沢山お客が来る日じゃのう」
「あんたは?」
「ハヤテのおじいちゃんじゃよ」
「ふぅん」
カケルと師匠の間にしばしの静寂が漂った。
「・・・そうなんだ。いやすみませんねうちの葵が迷惑かけたみたいで」
「ほっほっいえいえわしの方こそ無理に食事を誘ってしまったからの気にしないで下され」
たわいもない世間話を二人で繰り広げている最中、カケルは部屋の奥に青と緑があることに気がついて手を振った。
「ん?青ちゃん達もいるじゃん。やっほー!」
「カケルさんだお久しぶりです!」
「丁度いいや青ちゃん達も一緒に家に送るよ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「ほっほっほっ、では今日はお開きとしましょうかの。またいつでもいらっしゃい」
「はい!今日はありがとうございました。ご飯美味しかったです。ハヤテ君また明日学校でね!」
「お、お邪魔しました」
「お邪魔しました」
そうしてハヤテの自宅を後にしたカケル達は青と緑の家まで送った後、黄昏荘までの帰り道を二人で歩いていた。
「にしてもお前らよくあそこにいられたな」
「?、どうゆうこと?」
「気が付いてなかったのか?」
カケルは心底驚いた様子で葵の方を振り向いた。
「あの爺さんだよ」
「あの人が何?」
「本当に気がつかなかったのか、あのじいさん最初から最後まで殺意剥き出しだったぞ」
「ッ!?」
カケルが言った言葉の意味を葵は最初理解することが出来なかった。何故なら自分たちはあの家であの師匠と呼ばれていた人物と仲睦まじく会話をして、更に食事までしたのだ。
そんな相手が自分たちに殺意を向けていた?
「本当?」
「ん?あぁ本当だよ。・・・まぁ俺もあの人の声聞くまで気がつかなかったんだけどな。驚いたよあそこまでストレートに殺意向けられた、の・・・」
「カケル?」
自分が発した言葉に何か違和感を覚えたのかカケルがいきなり立ち止まり考え事を始めた。
ため息を吐きながら葵もそれに付き合うことにしてその場にしゃがみ込みながら待つ事にした。
「ん〜、やっぱそうだよな。似てるしな」
「どうゆうこと?」
「いや悪りぃ何でもないごめんな帰ろ」
「うん」
そうして二人は黄昏荘への道を再び歩き始めた。
ーー
ハヤテ宅
カケル達が自宅から帰った後、ハヤテと師匠の二人は少し奥に進んだところにある武道場で正座をして精神統一をしていた。
「ほっほっほっ、ハヤテお主が負けるのも仕方ないことだ。あの少年只者ではないぞ」
「・・・何のことですか?」
「とぼけるでない顔に出ておったぞ。お主が負けた相手はあやつじゃろ。わしの殺気に直ぐに気がついた上にこちらに殺意を向け返してきおった・・・思わず殺してしまうところじゃったよ」
その一言を発した瞬間、ハヤテは今まで感じたことのない殺意を感じ、思わず自分の祖父にして師匠である人物に刀を向けていた。
「ほっほっほっ、落ち着きなさいジョークじゃよ、ジョーク。びっくししたかの?」
そう言って立ち上がりながら武道場を後にする師匠の背中を眺めながらハヤテは刀を強く握りしめた。
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