何でも屋を営む少年

第1話 黄昏荘と何でも屋

 今年度一の最高気温になると言われた夏。私はパチパチと燃え盛る炎をジッと見下ろしていた。

 こんな日に何故こんなことをしてしまったのだろうか。と少しだけ後悔しながらも私は机の上に置いてある一枚の紙を手に取った。

 

 お困り事は何でも屋カケちゃんへ


 別のチラシの裏で作られたその紙を見て私は拳を強く握り締めた。


 ーー


 ネオ・アストラルシティ。十数年前に起きたとされている第三次世界大戦時に置いて日本が戦略都市として東海三県を一つの都市として生まれ変わらせた巨大都市。

 とある少年、カケルはこの都市で何でも屋なる仕事を高校生ながらに営んでいた。

 手に持つスマホを見ながら垂れてくる汗を手で拭いながら、依頼主との集合場所まで来ていた。


 「あっちぃ、こんな日に受けるんじゃなかったぜ」


 集合場所である公園まで来たカケルは辺りを見渡してそれらしき人物がいないのかを確認した。

 そうしていると噴水前に座っている茶髪でショートカットの髪型にそばかすが特徴的な女性を見つけ、依頼主と合致するのを確認した。


 「えーと、あんたか?俺に依頼したいって言って来たのは?」


 違ったら恥ずかしいがそれらしき姿はこの人しかいない。そう考えたカケルは意を決して声をかけた。


 「え、貴方は?」

 「俺か?俺は何でも屋カケちゃんを営んでいるカケルって言うんだよろしく」

 「え、貴方が?あ、ごめんなさい。もう少し歳上を想像してたので私の名前は鈴木燈と言います」

 「やっぱしそうか流石俺だな!」


 はっはは、と高笑いを決めながらカケルは辺りを見渡して公園の木陰から依頼主をジッと見つける黒いフードを着た男がいる事に気がついた。


 「今日の事を誰か知ってるのか?」

 「い、いえ。誰にも言ってはないですけど・・・」

 「よし分かった。少し場所を変えてもいいか?」

 「え、別に大丈夫ですけど」

 「じゃあ、行こ」


 カケルは燈と共にフードの男がいる方向とは別の場所から公園を出て目的の場所まで向かった。

 

 「チッ!」


 その姿を見ていたフードの男は舌打ちをしながらカケル達の後をつけて行った。


 ーー


 カケル燈と共にが向かった先は自分の家でもある"黄昏荘"だった。


 「ここは?」

 「俺ん家、黄昏荘って言うんだ。少し煩い奴らが多いけど気にしないでくれ」


 そう言ってカケルは黄昏荘のドアを開け中へと燈と共に入って行った。

 玄関を抜けリビングに入ると、吹き抜け式の天井の下ではテレビでゲームをしている子ども達が楽しそうに遊んでいた。


 「お前らー部屋に依頼主入れるからあんま騒がしくすんなよー」

 「「「「はぁーい」」」」


 そう言い聞かせたカケルは2階に上がり、部屋のドアを開けてた。

 部屋はベッドとクローゼット、テレビ、机があるだけのシンプルな部屋となっていた。


 「さて、早速依頼内容を教えてくれるか?」

 「はい・・・」


 鈴木燈の依頼内容はこうだった。

 数日前から彼氏の自宅で燈自身の親友でもある伊藤美希子が焼死体で見つかったらしく、それと時を同じくして彼氏である畠中諭が行方不明となったらしい。

 大学や実家にも帰って来ていないらしく、警察も捜査を続けているが未だ発見には至っていないらしい。

 そんなある日、ふとポストに入っていたチラシを見て彼氏を見つけて説得したいからとここに依頼をしたようだ。


 「なるほどな・・・」

 「やはり難しいでしょうか?」

 「いやそんな事はないぜ。だが、彼氏の情報を少し貰ってもいいか?」

 「はい。えっと名前は畠中諭、年齢は20歳で身長は178、趣味は水泳です。後は、」

 「それだけ分かれば後は十分だ。後はあんた暫くの間だけでもいいんだがここで暮らせるか?」

 「え、はい。一応大丈夫ですけど」


 カケルは分かったと言い立ち上がり少し部屋を開けると言って一階に降りて行った。

 少し経った後、部屋に戻って来たカケルは狐耳をつけた和装の女性と二頭身の緑のスカーフをつけた犬を引き連れて部屋に入って来た。


 「お待たせ悪いな。後もう少しだけ待っててくれ。頼む」


 狐耳をつけた和装の女性はカケルに頼まれると何かしらの札を取り出し部屋の隅にそれを貼り付けた。


 「暫くは窮屈かも知れないけど、ここで生活をしててくれ」

 「あ、あのこれは?」

 「結界だよ。俺は今から少し家を出るから、あんたはそこから出ないでくれよ?」


 そう言ってカケルは立ち上がり部屋を後にした。


 ーー


 カケルは外に出た後、近くにある電柱にまで歩いていきそこにいる男に話しかけた。


 「あんたが畠中諭だな?」

 「・・・」

 「悪いけど今はあの人を捕まえる事はできないぜ?」

 「邪魔するな!」


 そう言ってローブの男はナイフを取り出してカケルに切りかかっていった。

 カケルはそれに避ける事もせずに受け止め腹部に蹴りを決め込んだ。ローブの男は電柱にぶつかり鈍い音と共に地面に疼くまり痛みに耐えていた。


 「やめとけ、素人じゃあ俺には勝てねーよ。大人しく投こ、」

 「黙れ!俺はここで捕まるわけにはいかないんだ!」


 そう言って男は起き上がり電柱に触れた瞬間電柱は地面へと沈んでいった。


 「お前、それまさか!?」

 「死ねぇ!!!」


 そして沈みかけている電柱を前方にいるカケルに当たるように勢いよく倒した。

 ドガァンッ!と言う音と共に辺りは少し煙が立ち込めていた。


 「お、お前が悪いんだ、俺の邪魔するお前がっ!!」


 男は自分の手で人を殺してしまった事に怯えながら少し震えた声でそう呟いた。


 「驚いたぜ。まさかあんたnoiseの発現者だったなんてな」


 男が声がする方向を見るとそこには先程、確かに電柱を落としてその下敷きにした筈の男がそこに立っていた。

 見れば電柱は男の場所のみ何かに殴られた様な砕け散りかたをしていた。


 「ま、俺の敵じゃない事には変わりないんだけどね?」


 カケルは赤い瞳をギラッギラに輝かせながら男に対しそう答えた。

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