逃げる少女

家族の元へ

第1話

7月の第1金曜日。快晴の午後。

朝、葬儀を済ませて火葬場に行き再びもどった斎場。

そこは私鉄の小さな駅の側にあった。

広い駐車スペースも有していてなかなかに利便性の高い斎場。


「よく頑張ったね。」


何度目かの言葉を小さな骨壺二つに収まった彼女にかけた時、


しおり。」


彼に呼ばれた。

ソファーから立ち上がった私は彼に軽く頷き


「トイレに。」


ひと言告げて歩き出す。


「待て。」


呼び止める声に内心の震えを隠して振りかえる。


「二人付ける。」


私は頷きゆっくり歩き出した。

良かった。

骨壺が入った紙袋を見とがめられなくて。私は軽く息を吐きトイレの前で振りかえる。

後ろに付く強面に


「化粧を直すから10分待って。」


そう告げてトイレに入る。

中の様子は朝入った時にリサーチ済み。私は真っ直ぐ鏡の置いてある洗面台に向かうとヒールのまま洗面台に足をかけ顔の高さにある窓を開ける。

体を通すのには十分な広さ。

少し高いけど躊躇わず飛び降りた。


ザッ!

下は砂利が敷いてあって、ミニスカートから出た膝を着いた私は少し擦りむいた。黒のストッキングが伝染したけどかまってられない。

建物の間の狭い隙間で立ち上がり、足音に気を付けて走りながら指輪、ネックレスとピアスを外し生け垣に捨てた。

1つ捨てる度に身体から棘が抜ける気がした。

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