合格祈願は恋愛祈願?
尾羽紫利神社での出会い
第1話
「田舎だ…。」
7月。夏休みに入った最初の日、部長に頼まれて何故かこんなド田舎の神社まで来た私。田舎と言うより山奥じゃん。バスを降り見上げた石段にため息が出た。
100段位軽く有りそうだ。
勘弁して欲しい。弱小卓球部のマネージャーなんだから人並みの体力しかないんだし。
それでもここまで来た以上帰る訳にもいかず。仕方なくゆっくりと階段を登りだした。
きつい石段を登りながら頭に浮かぶのはここに来た経緯で…
私の通ってる
3年生の卓球部の部長の頼みで。何故か、こんな日に3本しかバスの通らないド田舎の神社に来た。
『頼むよ!あの神社は霊験あらたかだって評判なんだ。』
何年か前に、一年留年した馬鹿な暴走族の総長様がここでお守りを頂いて有名私立大学に合格したそうな。
以来結構ネットで騒がれたらしいんだけど私は全く知らなかった。
「先輩のお守りでしょ。自分で行かなくてどうするんですか。」
私なんてはっきりいって部長の受験に何の興味もない。そりゃ、受かって欲しいとは思うが落ちても一緒に凹む程肩入れしてる訳じゃない。
そんな私が頂いたお守りが果たして効くのだろうか。
そう思ってたら
『尾羽紫利神社のお守りは、異性がもらったものを受け取らないと効き目が無いんだよ。』
「なんですかそれ。」
どんな由来があるんだか訳の解らない神社だ。
それから毎日のように頼まれてとうとう根負けした私は今朝、部活をサボってここに来た。自主的じゃなくて部長命令だから仕方なく。
そんなにまでしてここのお守りが欲しいのだろうか。
それにしても山の中だから涼しいんだけど、セミがうるさいし藪蚊もいる。早く貰ってさっさと帰ろう。
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