高校生活

帰宅拒否部

第1話

季節は初冬11月。放課後の県立高校一階美術室。

今日も私はそこに入り浸る。

古い机と椅子が数脚。

教室の中は絵の具の匂い。

温泉水を利用したスチームの暖房が暖かい。本来なら美術部の活動中の筈なのに絵筆を握る子は数人。日によっては皆無の日もある。

幽霊部員の多いここは今帰宅拒否生徒の溜まり場だ。

人呼んで『帰宅拒否部。』

家庭に何かしら問題のある生徒の溜まり場がこの美術室。

都会なら多分繁華街なんかに繰り出すんだろうけど。

学校の周囲は林。民家が数件。

なにしろひなびた温泉地の近くの県立高校。高台にある高校から温泉街を抜けて日に数本のバスが麓の駅まで動いてるだけ。行き場の無い生徒が安全に過ごせる場所なんて簡単には探せない。


「朝から母親と父親がまた喧嘩でさ。」


「懲りないよね。やるんなら俺らの居ないところでヤれっつーの。ウザイ!」


「だよなぁ。お互い口もききたく無いからって俺を伝言板にするなっつーの。」


「マジ、とっとと別れてほしい。」


「ええっ!離婚したら引っ越しちゃうかもじゃん。」


「あ~、それはちょっと嫌かも。ここに来れなくなっちゃうもんな。」


「お!新作ポッキーいただきっ!」


「ちょっと!それあたしのっ!」


「はいはい。ポテチあるから怒らない。」


「オレンジジュース付きなら許す。」


「ふふっ。」


私は窓辺の椅子に寄りかかり読んでた本を膝に置いた。私の笑い声に気が付いて


「真由加、読み終わったか。」


背中合わせに座ってマフラーを編んでた頼可が声をかけてきた。

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