第6話

「美紅、いいのか?

小田切聡太は確かに若頭の時から切れ者で知られてる。

カリスマ性もあるいい男だが女嫌いで有名だし。愛人話だって叔父に強く言われて渋々頷いたらしい。

実際、小田切の所でどんな扱いをされるかわかんねんだぞ。」

心配そうな顔のお兄ちゃんに俯いたまま答える。


「それでも長谷川組の後ろ楯になって下さるんでしょ。

山田の組長に好きにされるくらいなら女嫌いの愛人の方が100倍ましだよ。」

私が強く言い切ると


「確かにあんなゲスを義理の弟なんぞにしたかねえが。かといって17才のお前に愛人話なんて…」

苦渋の選択。長谷川組若頭であるお兄ちゃんはまだ25才。

頭は良いしそれなりのカリスマ性だってある。

意思も強い。贔屓目じゃなくいい男だ。

ただ、今の長谷川組は立場が悪くて下手を打つと潰れてしまう。

強い後ろ楯がいるのだ。


救いの手を差し伸べたのは長谷川組の所属する近畿敬侠会きんきけいきょうかいでもかなり上に居る青井組あおいぐみの組長。


そして私の愛人相手はその青井組長の甥にあたる男。

近畿敬侠会トップの小田切組の組長。


「わかった。青井組の組長の側近を客間で待たせている。お前一人とサシで話したいそうだ。会うか。」


「会います。話してみなくちゃ何も始まらないから。」


お兄ちゃんの言葉に私は静かに頷いた。

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