美少女は愛人志願

正妻と愛人の選択

第1話

広々としたLDKを落ち付きなく見回して何度もソファーに座ってまた立ち上がる。そんなことを繰り返してる私。

キッチンには彼が好物だというチキンカレー。コンソメスープ。

冷蔵庫には夏野菜のサラダ。


カレー皿もスープ皿も、スプーンも用意したし。ご飯も炊き上がってる。

頭の中で何度もシュミレーションした挨拶。


それなのに…


カチャ、パタン!


いざとなると全てふっ飛んでしまう。


慌てて玄関に走り出ようとして、スリッパを踏みつけてフローリングの床に座り込んでしまった間抜けな私の目の前で

無情にもカチャリと音を立ててドアが開き、待ち人の姿が現れる。

フローリングの床から見上げる彼の姿は圧巻だ。


身長180㎝の美丈夫。栗色がかったサラサラな髪。

綺麗な二重瞼は少しつり上がっていて、甘いマスクをキリリと引き締めている。細く見える体は着痩せして見えるらしい。

部屋に入るなりスーツの上着をソファーの背凭れにかける。その時に下から現れた体のラインでわかってしまう。

予想していたよりかなり胸板が厚い。

呆けた顔でぼんやりと、ソファーに腰掛けた彼を見詰めていた私は慌てて我に返り立ち上がった。


パタパタとテーブルを挟んだ彼の向かい側。ソファーの前に立ち名前を名乗る。


長谷川美紅はせがわみくです。今日からよろしくお願いします。」

深々と頭を下げた私をさして興味も無さそうな顔で見詰める彼。


はっきりいって無関心。

そんな感じがする。

何だか心が折れそう。

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