身代わり

第2話

不味いな。頭が痛い。体も重いし…

これは風邪ひいたな。

最悪なことに喉も痛くてどうやら扁桃腺が腫れてるっぽい。こうなると、


「こほっ、こほっ。」


咳がでて熱が上がる。


「大丈夫?三浦みうらさん。」


まだ若い20代の養護教諭が声をかける。


「大丈夫です。化粧室で少し休みます。」


女子高の郊外学習で訪れた美術館。

施設はまだ新しくてトイレにはドレッサー室が付いてる。

養護教諭のはやし先生は私にマスクを渡すと体温計を差し出す。


「熱が高い様なら、お家の方に連絡しなくちゃね。」


「‥‥‥‥」


「ちょっと待っててね?」


多分担任に報告に行った林先生。

連絡しても誰も迎えには来ないんだけどなぁ。体温計を放り出しドレッサーに伏せる。


ピピピッ。


途中ではずされた体温計を見ると38・1度。体力には自信があるけど発熱は辛い


「高ッ!インフルエンザかなぁ。」


コホ、コホ…。


風邪菌をばら蒔く訳にもいかずもらったマスクを装着する。

ふぅ~。冷たいドレッサーのテーブルが気持ち良い。

さて、どうしよう。


季節はまだ4月。入学して直ぐの学年行事。特別仲の良い子も居ないし。てか、私って敬遠されてるしね。

バカではない。学力はある方だし空気も読める。運動神経には自信がある。

顔は美人ではない。残念だが。然りとてブスでもないと思いたい。

私が敬遠されるのは家庭環境に問題があるからだ。

地元の高校に進学するしかなかった私は、悪意のある噂話から解放されなかった。

それだけ。

バスに乗り高速を走り2時間半も揺られて来た住んでる田舎とは桁違いの都会の美術館。

東海の片田舎から関東の地方都市へ。

せっかくの美術館見学なのに。


「なにやってんのよ。私!」



「大丈夫?」


少しくぐもった声はまだ幼くて、何処かで聞いたような…

ぼんやり顔を上げた私は固まった。

どうやら脳が熱でヤられたらしい。

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