NERVOUS

苦手なもの

第1話

「やだっ、奈美なみっ!あんたそれでフラれたの。」

学校近くのファミレスに舞彩まいの声が響く。


止めて欲しい。知り合いが聞いてたらどうすんのよ恥ずかしい。私は首をすくめて周囲をキョロキョロ見渡す。

開店したばかりのファミレスの人気は少ない。

知った顔がないのを確認して肩の力を抜いた。


「舞彩ってば声が大きいよ。」

私のささやかな抗議を遮るのは敦美あつみの声。


「なんでまた、お化け屋敷なんかに入るかなその男も…」

呆れたように言って目の前のコーラを一口飲む。


「知らないわよ。『やだっ』って言ったのに無理やり引っ張って中に入ろうとするから…」

ミルクティーを前に話をする私は白川奈美しらかわなみ16才の女子高生。


「持ってたバッグで思い切り顔をぶん殴ったんだ。あ~あ勿体ない。

そりゃフラれるわ。結構なイケメンだったのにぃ。」

アイスコーヒーを飲む舞彩に苦笑いされた。

だってしょうがないじゃん。お化けの類いは大嫌いなんだもん。

作り物だってわかっててもダメなもんは駄目なんだ。


「こないだの彼って舞彩の彼氏の友達でしょ。言ってなかったの。奈美がお化けダメだって。」

敦美はカラカラとストローで氷をかき混ぜる。


「ちゃんと言ったわよ。怖がるからお化け屋敷は絶対ダメだって。」

ムッとした舞彩が口を尖らせた。


「それでも奈美を連れ込もうとしたって事はだね。」


「どれよ!」


「だから『きゃ~怖いっ。』ってベッタリしがみつくアレ!アレ狙い。」


「‥‥‥」

確かにイケメンだけど軽そうな男だった。


二度目のデートが遊園地。

色々リサーチしてバスケットにサンドイッチとか作って持っていったのに。

食べることなく私はそのサンドイッチが入ったバスケットを思い切り振り回して彼の顎をぶん殴って逃げ出したんだ。


夏休み前の日曜日。

彼に振られた私は舞彩と敦美に呼び出され、学校近くのファミレスに来たと言うわけ。

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