第48話

「…アドバイス位だぞ。」


「うん。ありがと。」

ニコニコ笑う私に秀一郎は仕方ないなと頭をかく。


「今のコイツは喧嘩弱いし。力で工藤を引っ張るのは無理だ。」


「うん。」

喧嘩強いとか、やんちゃしてたとか、気性の荒い連中を従わすには効果的だよね。

実際、秀一郎も『龍王』って族の総長で金城さんは副総長だった。それだけで尊敬の目で見られるもんね。


「だからって上に行けない訳じゃねえ。」


「うん?」


「亜依。お前だって知ってるだろ。若頭邸で喧嘩弱い癖にそれなりに偉そうにしてるやつ。」


「…あ!田辺さん。」

確かに喧嘩の弱さは折り紙つき。多分私より弱い。


「つまり?」

「頭脳派になればいい。」

「正解。」

私はぽかんと私たちを見てる山路さんを見た。頭の良し悪しは見た目じゃわからない。

話した感じは素直だなぁって印象。


「荒くれ達との駆け引きができる位に腹黒なら言うことは無いんだが。」


「…あははははっ。」

真逆じゃん。

それ服部さんのイメージでしょ。

今の山路さんは喧嘩できない伊達さんかな。


「適性を見極められる奴に仕えて可能性を探ってから諦めても遅くはねえだろ。」


「確かに。」


「山路にその気があるならの話だが。」

山路さんをチラリと見た秀一郎に


「あります!是非ともお願いしますっ。」

山路さんは深々と秀一郎に頭を下げて

里江さんは感極まって泣いてしまった。


「ありがとう!亜依さん。ロウくん。」

何度も何度もお辞儀を返した里江さんを工藤に帰し山路さんは真嶋の若頭邸に残った。


「マジで甘いな。」

秀一郎に言われたけど里江さんには謝って貰ったしそれで十分だ。

山路さんはてっきり秀一郎の下に付くんだと思ってたのに、いつの間にか彼は若頭邸から姿を消していた。

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