第30話

「…妊娠したのよ。」


「‥‥‥」


「「「「はあっ!?」」」」

あんぐりと口を開けたヤクザ達。

次の瞬間、弾かれたように俺を見た。

冗談じゃねえ!

死んでもこんな女抱くか!


「父親はソイツか。」

俺は横に座らせた淳志と言う男を顎で指した。


「ええ。」

あっさり認めた里江に組員達が安心して肩の力を抜く。


「良かった~。」

「マジで焦った。」

「俺、成瀬と湯島も巻き込んで抗争になるのかと泣きそうになったっす。」


「‥‥‥」

おい!誰か一人くらい俺を信じろよ。

憮然とする俺に


「お気の毒ですが朝帰りされた若頭の肩を持つものはごく僅かかと。」

金城に言われてますます落ち込んだ。


「貴女の事情はわかりました。で?だからなんでうちの若頭を。

産むなりオロスなり勝手になされば宜しいでしょう。」

そのまま里江に質問した金城。

そうだ俺を拐って何になる。まるで無関係だろ。


「私は産みたいのよ。だから…間接的な仕返しだわね。真嶋亜依に。」


「「「「 あ゛!? 」」」」

和室にいた組員全員が工藤里江を睨み付けた。何でここに亜依の名前が出てくるんだよ。


「産みたきゃ勝手に産めよ。我が儘お嬢様で通してんだから組員との結婚もアリだろ。相手は確かに頼りないが。ソイツは補佐に回して最悪子供を組長につける手もあるだろ。」

面倒臭いが口を挟めば、


「そうする気だったわよ。産んじゃえば孫可愛さに両親だって折れるってね!あんた達のお披露目に片桐誠之介かたぎりせいのすけが来るなんて話が出てこなきゃね!」


「「「‥‥‥!!」」」

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