お嬢様は逃走中

寮生活からの解放

第1話

「それでは生徒の皆さん、9月にまたお目にかかりましょう。」

にっこり笑って壇上から降りて、スポットライトから外れた位置まで移動してやっと息をつく。

お嬢様の皮を被るのはマジ疲れる。


私立桜華学園しりつおうかがくえん

知る人ぞ知る。名門のお嬢様学校。各学年1クラス。併せて3クラス90名。それがMAXでそれ以上増える事はない。

全寮制で、お嬢様女子高生達は24時間、(いや、睡眠中を除いて)みっちり、勉強と行儀作法それに社会常識を教え込まれる。

ここから解放されるのは、夏休み、冬休み、春休みのみ。

成績優秀者は5月の連休も外出を許されるが、逆に成績不良者はずっとこの閉鎖空間に閉じ込められる。

そう。桜華学園の校舎とその隣に立つ桜華寮は周囲を10メートルの高さの壁で囲まれ、完全に一般社会から隔離されている。

知らない者は、高く聳える壁を見て、刑務所と間違える位なのだ。

だけど、ここはれっきとした女子高で、日本の政財界のトップの子供達が多く在籍する超有名校。

この閉鎖空間も、女子高生達を誘拐犯等の犯罪から守る為のモノに他ならない。

まあ、ごく稀に手に負えなくなったお嬢様を世間から隔離するために、放り込む親達もいるんだけどね。

私みたいに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る